研究課題
初年度は、ムコ多糖症患者から疾患特異的iPS細胞を樹立し、樹状細胞(DC)へ分化誘導することに成功した。DCの自然免疫応答を解析するためにTLRを介した炎症性サイトカインの産生を測定した結果、健常者由来のiPS細胞から分化したDCとの比較では、zymosanとMALPによるサイトカイン産生が健常者と比較してムコ多糖患者では低い事が示された。翌年度は、対照となる健常者の新生児期と成人期の自然免疫応答の差異について解析を進め、新生児におけるTLRを介した自然免疫応答の未熟性は免疫担当細胞やTLRによって異なり、zymosanがTLR2を介して新生児に成人と同等の免疫応答を惹起できる事を明らかにした。最終年度は、zymosanのワクチンアジュバントとしての有用性をさらに検討した。ZymosanはTLR2/TLR6ヘテロ二量体のリガンドとされているが、MALP2もTLR2/TLR6ヘテロ二量体であることから、zymosanとMALP2の間で自然免疫応答の活性化に差がないかどうかを評価した。その結果、単球とDCに関しては、zymosanとMALP2の間にサイトカイン産生の差は認めず、単球由来DCへのMALP2刺激によるサイトカイン産生に関しては、IL-8,IL-6,TNF-αは臍帯血群が成人血群よりも有意に高値であった。以上のことから、TLR2/TLR6ヘテロ二量体に対するリガンドであるZymosanとMALP2のサイトカインプロファイルは免疫担当細胞間で差がみられ、今後ムコ多糖症の小児患者に対するワクチンのアジュバントを開発していくためには、TLR2/TLR6ヘテロ二量体のリガンドが一様に候補となるわけではなく,Zymosanが活性化する経路に焦点をおいたアジュバント開発が必要であると考えられた。ムコ多糖症の疾患特異的iPS細胞から分化させたDCに関しては、培養条件によってプロファイルが一定しないという問題がみられたため、今後は安定した培養条件下で分化したDCを用いてzymosanを含めたTLRリガンドの反応性を検証していく。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Pediatrics
巻: 167 ページ: 155-162
doi:10.1016/j.jpeds.2015.03.035