研究概要 |
てんかん原性の獲得や発作の進展に対するArcadlinの作用を調べるために、arcadlinノックアウトマウス(acad-/-)と野生型マウス(wt)を用いて、扁桃体慢性キンドリング実験を行い、両群の発作脳波や痙攣行動を比較検討した。キンドリングは1日1回、閾値+50uAの刺激強度で実施し、脳波と行動を同時に記録・観察した。慢性キンドリングでは、扁桃体刺激によって発作脳波(after discharge:AD)が誘発され、その程度によりてんかんに関連した行動変化(Stage 1:facial twitch, head nodding; Stage 2:forelimb clonus, realing; Stage 3:unilateral hindlimb clonus; Stage 4:bilateral hindlimb clonus, imbalance, sitting; Stage 5:falling)が起こることがわかっているため、acad-/-とwtを比較し扁桃体におけるてんかん原性の獲得や発作の進展に対するArcadlinの作用を調べた。閾値強度に差はなかったが、AD durationの進展ではacad-/-の方が有意に早く進展し、total AD durationもacad-/-の方が有意に長かった。また、stage5が5日連続で発生するまでに要した日数はacad-/-の方が有意に少なかった。また、キンドリング後の海馬において、9日以降にArcadlinタンパクの発現が強まっていた。以上より、Arcadlinはてんかん発作の進展を促進することがわかった。また、痙攣発作自体がArcadlinの誘導に関わっていることがわかっているため、てんかん痙攣発作が繰り返されれば、新たに誘導されたArcadlinが次の痙攣発作を悪化させるという相互作用があると考えられた。
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