本年度は、小動物用MRIを用いて20週齢のarcadlin knockout mice (acad-/-)10匹とwild type mice (wt)10匹のMRI画像を6枚ずつ取得し、脳全体、大脳皮質、線条体、海馬の面積を測定し、それぞれの部位ごとに6枚分を合算し、それをその個体の値として両群を比較した。 その結果、脳全体はacad-/-が有意に小さかったにも関わらず、大脳皮質はacad-/-の方が有意に大きかった。そのため、脳全体における大脳皮質の割合は、acad-/-が有意に高かった。一方、線条体と海馬の面積については、両群間に有意な差は認められなかった。 また、water maze testについては、これまでの実験からマウスの週令による差が観察されたため、今年度は12~16週齢のacad-/-10匹とwt12匹、20週齢のacad-/-8匹とwt8匹を用いて、それぞれwater maze testを行い週齢ごとに分散分析を用いて両群の比較を行った。その結果、12~16週齢の比較で、学習記憶過程においてacad-/-に有意な遅延が認められたが、20週齢の比較では有意差は認められなかった。以上の結果から、Arcadlinは週齢依存的に記憶学習に関わることがわかった。 MRIで観察された20週齢のacad-/-の大脳皮質がwtに比べて有意に大きかったことが、12~16週齢のacad-/-で見られた学習記憶過程の遅延が20週齢のacad-/-では消失したことにどのように関係してくるのか、今後さらに検討する必要があると考えられた。
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