研究課題
低ホスファターゼ症(HPP)は組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の遺伝子変異による先天性代謝異常症である。HPPは骨や歯の低石灰化やてんかん発作等の症状を呈し、周産期に発症する重症型は致死的で有効な治療法の確立が待たれている。我々は既にTNALP遺伝子を欠損したモデルマウス(HPPマウス)を用いて、10分子のアスパラギン酸を付加した骨親和性TNALP(TNALP-D10)を発現するレンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターを投与する遺伝子治療の有効性を報告している。本研究では、治療用のウイルベクターを直接投与することなく、より安全に持続的な治療効果を得ることを目的として、TNALP-D10遺伝子を強発現させた骨髄幹細胞を移植する新規再生医療・細胞治療の研究を行なった。HPPマウスは血中ALP活性が全くなく、骨形成不全を伴って生後早期(2週間前後)に死亡するが、生後2日目の新生児期にTNALP-D10発現骨髄幹細胞を移植することで血中ALP活性の顕著な上昇を認め、生存期間が有意に延長することを確認した。さらに、TNALP-D10発現骨髄細胞を移植したHPPマウスの大腿骨を摘出し、マイクロCTを用いた骨形態計測を行った結果、未処置の骨髄細胞を移植したHPPマウスと比較して明らかに骨形成能の改善が認められた。また、各臓器(脳、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、骨)のALP活性測定を行った結果、骨組織におけるALP活性の有意な上昇が認められ、かつ、骨組織において骨梁及び皮質骨表面に特異的なALP活性を確認した。これらの結果から、発現したTNALP-D10タンパク質が効果的に骨周辺へ蓄積し、骨形成が促進されたと考えられる。本研究により、低ホスファターゼ症に対して一回の移植で長期間持続的な治療効果が得られる、新規再生医療・細胞治療の基盤技術を確立した。
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