研究課題/領域番号 |
25461565
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
古川 絢子 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助手 (10455537)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / プロテオミクス / 興奮毒性 / 神経細胞死 |
研究概要 |
本研究は、興奮毒性による神経細胞死を制御するメカニズムに関わる、グリア細胞由来の分子を明らかにする事を目的として、興奮毒性時におけるグリア細胞の機能変化をタンパク質翻訳後修飾や酸化傷害、転写因子Nrf2の活性とその下流の遺伝子発現を中心に解析する。興奮毒性時にグリア細胞が作り出す脳内微小環境を解析し、その正常化を目指す事で神経細胞保護的な環境を作り出すことを目標に行った。本年度は、神経細胞およびアストロサイトの初代培養系を確立し、興奮毒性に対する応答を解析した。 E17.5ラット胎児の大脳皮質から調整したアストロサイトは、興奮毒性試薬であるグルタミン酸による細胞死が認められなかった。しかし、細胞内グルタチオン量の減少が認められたことから、興奮毒性によって細胞内の抗酸化能が減少している事が示唆された。現在、興奮毒性曝露後のアストロサイトにおいて、酸化修飾を受けるタンパク質の同定を進めている。また、翻訳後修飾の変化によるタンパク質機能の変化を検討する事を目的とした、リン酸化タンパク質の定量解析も行う予定である。リン酸化タンパク質の検出には、二次元電気泳動法とPhos-tag Biotinを用いたウェスタンブロット法を組み合わせて行ったが、二次元展開したタンパク質が微量であるためか、良好な結果が得られていない。リン酸化タンパク質の濃縮など、前処理の検討が必要である。 E17.5ラット胎児の海馬から調整した神経細胞は、NMDAやカイニン酸の濃度依存的な神経細胞死が認められた。現在は、細胞内抗酸化能を担うグルタチオン合成に関わるタンパク質の発現変動解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経細胞、アストロサイトの初代培養を確立し、興奮毒性による酸化ストレスが引き起こす細胞内応答を検討している。本年度は、興奮毒性による細胞機能の変化にについて、酸化損傷を受けるタンパク質とリン酸化修飾を受けるタンパク質に注目した網羅的解析を進めている。リン酸化タンパク質検出については、前処理を検討して実験条件の改善を試みている。転写因子Nrf2の関与についての解析はこれからであるが、アストロサイトで興奮毒性によるグルタチオン減少が確認できており、転写因子Nrf2とグルタチオン産生との関わりを明らかにする実験の方向性は見えているため、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、興奮毒性に曝露した初代培養アストロサイトにおいて、転写因子Nrf2とその下流の抗酸化能に関わるタンパク質の発現変動を中心に解析し、アストロサイトが興奮毒性に対してどのように応答するかを明らかにする。また、リン酸化プロテオミクスによってリン酸化タンパク質を定量、同定し、興奮毒性によるアストロサイトの機能変化に関わるタンパク質を検討する。さらに、培養上清や共培養系を用いて、興奮毒性に曝露したアストロサイトが作り出す環境が神経細胞の生存に与える影響を解析し、神経細胞保護的な役割に寄与する分子を明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
備品や血清などの購入予定額と購入費用に差額が生じた。 次年度は、Nrf2転写因子が関与する酸化ストレス応答タンパク質の発現変動解析と、グルタチオン合成系に酸化ストレスが与える影響を中心に解析する。そのため、初代培養に使用する動物、各種抗体、培養に必要な試薬およびプラスチック消耗品などを購入予定である。研究成果を日本薬学会、日本神経病理学会、酸化ストレス学会などで発表するため、旅費を計上した。
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