研究課題/領域番号 |
25461570
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
西 芳寛 久留米大学, 医学部, 講師 (20352122)
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研究分担者 |
太田 啓介 久留米大学, 医学部, 准教授 (00258401)
馬田 敏幸 産業医科大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (30213482)
松石 豊次郎 久留米大学, 医学部, 教授 (60157237)
御船 弘治 久留米大学, 医学部, 准教授 (70174117)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グレリン / 放射線防御効果 / X-線照射 / 骨髄移植 / レット症候群 |
研究実績の概要 |
レット症候群モデルマウス(Mecp2tm1/Bird mice:Rettマウス)及び、野生型マウスに 9.5 Gyの全身照射を行い、内因性の骨髄細胞を破壊した後に GFP-Tgマウスの骨髄を移植して、移植後に生着した骨髄細胞に由来する血球・間葉系細胞が蛍光顕微鏡下で確認できる移植系を確立した。同細胞に由来する間葉系細胞が、消化器・循環器系の臓器へと遊走・生着している状態も確認した。
この系を用いた野生型マウスへの骨髄移植は、成功率(生着率)40%前後とほぼ良好であるが、Rettマウスへの生着率は現状では非常に低い。Rettマウス・eGFPマウスともに遺伝背景は BL6/J 系に予め揃えてあるが、それ以外の因子が骨髄細胞の生着に影響する可能性が考えられた。具体的には、KOマウス作成時に B6系が使用されている他、出産後のマウスの保育用に Hoster Mouseを使用しており(Mecp2ヘテロ母親の保育能力が低い為)、これらの系統の影響が考えられた。この為、移植用の e-GFPマウスを Rettマウスの野生型(姉妹・兄弟)と交配させ、両者の遺伝的背景を揃える操作を継続中である。現在、eGFPマウスの繁殖・維持は研究代表者の下で順調に進んでいる。
サブプロジェクトとして実施中の「放射線障害へのグレリンの防御効果」の検討については、γ線照射実験(分担研究者)に加えて、体外照射用エックス線装置による照射実験を開始した(2015年度より本学で稼働開始)。新たな分担研究者(川原)も迎えて、このサブテーマの検討をより充実させる方針である。このほか、レット症候群に対するグレリンの単独投与による神経症状の回復効果に対する検討を継続しており、同疾患におけるグレリンの産生分泌障害に関する「2報目の論文」が、昨年度の10月に公表(冊子体)となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2014年11月以降、発達障害疾患:Rett症候群のモデルマウス(Mecp2-KO)の維持・繁殖に問題が起こっている。具体的には、同マウスの飼育担当者(研究補助員)の交代に伴い、本実験で使用する「Mecp2-KO hemi-♂ マウス」の出生頻度が低下している。この影響を受けて、同モデルマウスへの骨髄移植実験の実施頻度が減少している。加えて、γ線照射後の Rettマウスへの回復力が野生型マウスと比較して弱く(照射後10-14日での死亡:消化管死が多い)、移植実験の成功率が当初の見積もりより非常に悪いことも「研究の遅れ」の一因となっている。その一方で、Rettマウスへの「グレリン」の単独投与による同疾患の神経症状の軽快効果については再現性が確認されている。今後は、「野生型マウス」の放射線障害に対する「グレリン投与」による防御効果を主体としたデーターを集積しつつ、Rettマウスの繁殖が回復したら、同マウスへの骨髄移植を再開する方針。
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今後の研究の推進方策 |
1.サブプロジェクト(グレリンによる放射線防御効果)解析の充実:放射線障害に対するグレリンの防御効果の検討について、本学に新たに設置された「体外エックス線照射装置」を活用して進めて行く。具体的には、エックス線照射後(3~9.5 Gy)の骨髄抑制に対するグレリンの防御効果について解析を進めていく。Half lethal dose(LD50-14:7.5~9.5 Gy)付近の照射下での野生型マウスの生存率に対するグレリンの効果についても検討する。
2.グレリン単独効果の報告:レットマウスの神経症状(振戦・歩行・呼吸リズム・下肢反射ほか)に対するグレリンの単独投与(連日,3 micro-g/day,腹腔内)の効果について再現性がほぼ確認されたため、今後、同モデルマウス内でのグレリンの産生分泌動態の異常の所見と合わせて学会報告・論文報告を行う。
3.派生的に得られたデーターの解析と臨床研究への橋渡し:a)脳内のグレリン様分子(C10-Ghrelin-like molecule)の活性調節機構の解析:レットマウスの脳内で、神経伝達やグレリンの不活性化に関与する酵素タンパクの活性が「小分子RNAの発現異常」を介して亢進しているとするデーターが集積されつつある。今後、この領域の解析を進めて、Rettマウスの神経症状に対するグレリンの効果の「機序の解明」へと繋げていく。b)Rettマウスの解析によって派生的に得られたデーターについて、レット症例(ヒト)でも同様の異常が存在するか否か、いくつかの項目について検討する(グレリン・ストレス関連ホルモンの日内リズム、インスリン抵抗性ほか)。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者サイドで飼育・維持されていた Rett症候群モデルマウス(Rettマウス)の作出が一時的に滞り、この影響で予定されていた Rettマウスを使用した骨髄移植実験 の施行回数が減少した。このため、これに伴う費用(骨髄移植手技で使用する物品費・旅費・その他)の支出分が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
Rettマウスの繁殖・飼育が、再度、軌道に乗り次第、同モデルマウスを使用した骨髄移植実験を再開する。Rettマウスの繁殖が思わしくない場合には、サブテーマとして予め設定されていた「放射線障害」に対する「グレリンの保護効果」の検討を進めていく。上記サブテーマの遂行のために、本学(久留米大)に新たに導入された小動物用体外エックス線照射装置の操作を分担する研究者(川原)を新たに迎えて、研究推進の迅速化・効率化をはかっていく。
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