研究課題
ミトコンドリア病では、高乳酸血症の程度が高度であるほど臨床的に重症で死亡率も高くなる事が示され(Neurology 2011;77:1965-1971)、高乳酸血症を治療することがミトコンドリア病の重症度を軽減できると考えられるようになった。最近の臨床研究より、ミトコンドリア病に対する薬物療法(ピルビン酸ナトリウム:PA)の臨床的有効性を報告(BBA 2010 ;1800(3):313-315、Brain & Dev 2012;34:87-91、BBA 2012;1820:632-636)し、医薬品開発プロジェクトが重要となってきた。我々はMELASの細胞モデル(ローゼロサイブリドシステム)を利用し、細胞増殖速度、アポトーシス、ATP合成能、酸素消費速度、電子伝達系酵素活性、L/P比、代謝産物のメタボローム解析などを行い、PAの高乳酸血症低減の作用機序を網羅的に検証し、新規バイオマーカー(GDF-15)を発見(Mitochondrion 2015;20:34-42)、特許申請を行った(特願2014-005391、PCT/JP2015/50833)。その結果、今までにミトコンドリア病のバイオマーカーとして最も適した指標として報告されたFGF-21(Suomalainen A et al. Lancet Neurology 2011;10:806-818)と比較して、感度特異度ともに96.7%を誇る新規バイオマーカーを発見した(Annals of Neurology, revised 2015)。この新規バイオマーカーGDF-15は、今後のミトコンドリア病を疑う際の国際的スタンダードとなると思われる。また、このバイオマーカーは、治療効果判定にも有用と考えられ、臨床的評価指標のスタンダードとなると考えられる。開発した新規バイオマーカーは論文化中である(Annals of Neurology, revised 2015)。
1: 当初の計画以上に進展している
世界に先駆けて、新規バイオマーカーGDF-15を同定、特許申請(特願2014-005391、PCT/JP2015/50833)を行った。また、その臨床応用の有用性としての論文は、Annals of Neurologyという学術雑誌のFull articleとして現在revise中であり、reviewerのコメントも概して好意的であることから採択できると考えている。また、このGDF-15は、今後ミトコンドリア病を疑う場合のfirst line examinationとして位置づけ出来る、非常に有用な検査であり、グローバル展開を見据えて、現在キット開発中である(平成27年度のAMED採択課題として研究進行中)。今後は、世界に発信できるミトコンドリア病の診断薬として期待される。加えて、現在ピルビン酸ナトリウムの高乳酸血症に対する治療薬開発を行っており(平成27年度のAMED採択課題として研究進行中)、ミトコンドリア病に対する薬物療法の効果判定に関して、FGF-21やGDF-15などの新しいバイオマーカーを用いたスクリーニングシステムの開発を行っている。現在、交絡因子に関して網羅的に検討中である。
現在、ピルビン酸ナトリウムの高乳酸血症に対する治療薬開発を行っており(平成27年度のAMED採択課題として研究進行中)、ミトコンドリア病に対する薬物療法の効果判定に関して、FGF-21やGDF-15などの新しいバイオマーカーを用いたスクリーニングシステムの開発を行っている。現在、重症度の評価スケールについては、JMDRSやNMDASなどの評価スケールが存在するが、個々のミトコンドリア病に特異的な評価スケールの開発が世界的に望まれており、重症度の評価スケールの再検討、および種々のバイオマーカーを用いた交絡因子の網羅的検討と評価方法の確立にむけて研究を進める予定である。
今年度は研究で得られた成果発表に重点を置く結果となり、試薬等の物品の購入が計画を下回った。
最終年度は、新しく発見したバイオマーカーGDF-15について更に追求した研究を進める予定であり、未使用額分で試薬・キット等を購入する計画である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 2件) 図書 (3件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
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