研究課題
ミトコンドリア病はミトコンドリアの呼吸鎖の機能障害によって引き起こされる多様な疾患群で、ミトコンドリアDNA (mtDNA)または細胞核内ミトコンドリア関連 DNA の変異によって引き起こされる。幼少時に発症する症例の主立った mtDNA 変異に着目すると、MELAS で認められる3243A>G の変異は、母系遺伝をする代表的な変異である。 症状の多様性患者個々による症状の軽重があるなか、mtDNA 異常に共通点がみられることは、これらの異常 mtDNA の複製速度を抑制することで細胞内異常 mtDNA の割合を減少させることが症状の緩解に貢献すると期待される。我々は、塩基配列特異的に DNA に結合する Pyrrole/ Imidazoleを骨格とするポリアミド(PIP)化合物を作製し、細胞内への輸送手段を必要とせず細胞内に到達させ、遺伝子発現を操作する方法を開発している。このPIP化合物を応用し、変異 mtDNA の複製を遅延する方法を開発すれば、ミトコンドリア病という難治性疾患を持つ患者にとって有効な治療手段になると期待でき、その意義は大きいと考えられた。今回、PIP がミトコンドリアに送達されたことは明らかとなった、しかしそのミトコンドリアでの滞留時間(貯留量)の短さが、変異 mtDNA 減少までに至らなかったと考えられる。 そこで、TPP に PIP を結合させた化合物により、より大量の PIP を長時間ミトコンドリア内に滞留させることによって、変異mtDNA減少を誘導することを企画した。TPP は明らかにミトコンドリアに到達し、かつ48時間を経て完全にミトコンドリア局在していることから、PIP の結合により、TPP-PIP はミトコンドリア内に長期に局在することが想定される。現在行っている PIP-TPP の長期処理による変異 mtDNA への PIP の結合とその影響に期待したい。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Nature Communications
巻: 27 ページ: 1-8
DOI: 10.1038/ncomms7706