(1)高アンモニア血症治療に向けたin vivo解析 ① 高アンモニア血症モデルマウスの作製:先天性高アンモニア血症を引き起こす原因となるオルニチントランスカルバミラーゼ欠損マウスを用いて、ヒト細胞移植に使用可能に向けて免疫不全化(scid化)高アンモニア血症モデルマウスを作製した。② 高アンモニア血症モデルマウスへのヒト多能性幹細胞由来肝細胞の脾臓投与:作製した免疫不全オルニチントランスカルバミラーゼ欠損マウスの脾臓に、ヒト多能性幹細胞由来肝細胞を移植し、このマウスの生存率変化を検討した。その結果、ヒト多能性幹細胞由来肝細胞を移植した群では、投与液のみを投与した群に比して、優位に生存日数が延長した。(2)in vitro 毒性評価系の開発 ①ヒト多能性幹細胞由来肝細胞における薬剤誘導による解毒酵素遺伝子発現の解析:本方法において作製したヒト多能性幹細胞由来肝細胞を用いて、薬剤による解毒酵素遺伝子発現を検討した。その結果、in vitroにおいて、ヒト多能性幹細胞由来肝細胞はリファンピシン、オメプラゾール、フェノバルビタールによって解毒酵素遺伝子の発現上昇を認めた。モデル細胞を用いた毒性安全性試験を行うことで、「種差の壁」の限界を有する動物実験に代わる評価システムが構築され、医薬品開発の早いステージで候補薬を正確に絞り込むことができる。医薬品の開発に関する時間およびコスト低減のために最も有効な方法である。(3)安全性の検討 ①免疫不全ラットへのヒト多能性幹細胞由来肝細胞移植により、毒性試験、造腫瘍性試験などの安全性の検討を行い、オーファンドラッグとしての臨床応用へ向けて、研究実績を蓄積した。
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