研究課題/領域番号 |
25461576
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研究機関 | 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 |
研究代表者 |
福士 大輔 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 遺伝学部, 研究員 (90397159)
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研究分担者 |
山田 憲一郎 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 遺伝学部, 主任研究員 (30291173)
山田 裕一 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, その他部局等, その他 (70191343) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 均衡型相互転座 / 染色体逆位 / 知的障害 |
研究実績の概要 |
平成25年度に引き続き、5番染色体短腕の逆位が見られ、重度知的障害と成長障害を伴う1症例(症例1)と、12番染色体短腕と20番染色体短腕間での相互転座が見られ、軽度知的障害と自閉症を伴う1症例(症例2)の染色体断点部位のFISH解析を進め、以下の研究実績を得た。 症例1は、Gバンド法により5p13.1とp15.1にそれぞれ断点を持つ逆位と判明したが、昨年度のFISH解析でp13.1側の断点はp11領域内にあることを明らかにした。今年度は、昨年度絞り込んだ断点候補領域(p11側は約60 kb、p15.1側は約20 kb)について、BACクローンや遺伝子のゲノム配列を用いたFISHでさらなる絞り込みを行った。その結果、p11側の断点領域を約40 kbに絞り込んだが、同領域内に遺伝子は局在しなかった。一方p15.1側は、断点をLOC101929454遺伝子内の約3.2 kbの範囲に絞り込んだ。本症例は、Gバンド法により父親にも同様の逆位が見られるので、今後、父親の断点部位も同定し本症例の断点部位と比較することが重要である。 症例2は、Gバンド法により12p11.2と20p11.2でそれぞれ切断が起きて生じた相互転座であると判明しており、両親は正常核型である。従って、本症例はde novoの染色体構造異常であり、転座断点部位に病因である遺伝子が局在する可能性が高い。今年度は主にBACクローンを用いたFISHによる転座断点部位の絞り込みを行い、12番染色体は断点部位を12p12.1内の約3.1 Mbの領域に、20番染色体は20p12.3内の約2 Mbの領域に絞り込んだ。12番染色体の断点領域内には16個の遺伝子、20番では13個の遺伝子がそれぞれ局在し、現在その遺伝子のゲノム配列を用いたFISHにより断点の同定を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の染色体構造異常の断点部位の同定は、始めにBACクローンを用いたFISHで断点候補領域を数 Mbから数十 kb単位まで絞り込んだのち、同領域内に局在する遺伝子のゲノム配列を用いたFISHで数 kb単位に絞り込む方法で行っている。本研究がやや遅れていると判断した理由は以下の通りである。1)ライフテクノロジーズから購入したBACクローンの大部分が本来の物とは異なるケースが頻発し、断点の候補領域の絞り込みができず、断点の同定や病因候補遺伝子の同定、機能解析が遅れている。2)症例2は平成25年度の前半にインフォームドコンセントを得て、血液検体の提供を受ける予定だったが、提供が平成26年1月にずれ込んだため、今年度からFISHによる転座断点の候補領域の絞り込みを始めた。
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今後の研究の推進方策 |
症例1は、FISHによる絞り込みの終了後、逆位断点の近傍でプライマーを設計したPCR法や塩基配列決定法により、正確な逆位断点を同定する。その断点部位と父親の逆位断点を比較し、本症例の臨床所見と染色体逆位との関連の有無を解析する。すなわち、本症例と父親の逆位の断点が同一の場合は、逆位が症例に関与する可能性は低いので、家系員でのエクソーム解析を行い病因遺伝子の同定を行う。同定した病因遺伝子の解析後、症例報告として誌上で発表する。 症例2は、今年度絞り込んだ転座断点の候補領域内の遺伝子のゲノム配列を用いたFISH解析を進め、断点部位と病因遺伝子の同定を行う。症例1と同様に、同定した病因遺伝子が既知の場合、症例報告として誌上で発表する。新規遺伝子の場合は、そのタンパク質の機能解析を継続して行い、その成果を誌上で発表する。 また、今年度は相互転座が見られる重度知的障害の新規症例(症例3)の血液検体の提供を受けられなかったが、提供があり次第リンパ芽球細胞株を作製したのち、FISH法による断点候補領域の絞り込みに着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた試薬が予想よりも安く納入されたため、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の購入試薬の購入費分として使用予定。
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