研究課題
本研究では、染色体の構造異常を伴った3疾患について、その構造異常と臨床症状との関係を明らかにした。症例1は5番染色体短腕の逆位があり、重度知的障害と成長障害が見られる症例である。昨年度までのFISH解析により5p11と5p15.1間での逆位と判明した。平成27年度のFISH解析および塩基配列決定法により、逆位の断点部位をp11側は非遺伝子領域内に、p15.1側はLOC101929454遺伝子内に同定した。本逆位は健常な父親でも見られ、断点部位も同じであった。以上より、本症例の逆位は症例とは関連がないことが明らかになった。そこで家系員3名のエクソーム解析を行い、病因候補遺伝子を複数の遺伝子に限定した。症例2は12番と20番染色体の両短腕間でde novoの均衡型相互転座があり、軽度知的障害と自閉症が見られる症例である。昨年度までのFISH解析で転座断点の候補領域を12p12.1と20p12.3にそれぞれ絞り込んだ。今年度のFISH解析により、12p12.1の転座断点をSOX5のエクソン6近傍の約24 kbの領域内に、20p12.3の断点を非遺伝子領域内(約50 kb)に絞り込んだ。以上より、本症例はde novoの均衡型相互転座が見られる2例目のSOX5欠損症である。今年度解析を開始した症例3は顕著な下顎低形成、中程度の発達遅滞が見られるNager症候群の症例である。Gバンド核型は正常で病因遺伝子であるSF3B4の塩基配列に変異は認められなかった。そこでSF3B4を含む微小欠失を想定し、同遺伝子を含むBACクローンを用いたFISH解析とSNPアレイ解析を行った。その結果、SF3B4を含む1q21.2に約347 kbの欠失を同定した。本欠失領域にはSF3B4の他に18個の遺伝子が局在しており、複数の遺伝子が本症の成長障害や高度難聴と関連していることが示唆される。
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J Med Genet
巻: 52 ページ: 691-698
10.1136/jmedgenet-2015-103231.