本研究では、がん・白血病に対するNK細胞療法の有効性向上を目指し、NK細胞機能を予測する遺伝的因子に関する検討、およびNK細胞に抗原特異的な殺傷能を与えるキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor: CAR)の新たな導入法について検討した。 まず、健常成人における刺激型NK細胞受容体群の遺伝的プロファイルとNK細胞機能との関係について検討した。KIRおよびNKG2D遺伝子タイピングと並行して、NK細胞活性化受容体群の発現量、殺傷能(CD107a 誘導)、活性化能(CD25/CD69誘導)、サイトカインおよびケモカイン産生能(cytokine beads array)、体外増幅能(K562-mb15-41BBL共培養)を測定し、遺伝的プロファイルとの相関を検討した。Trogocytosis現象を利用したCAR遺伝子の新規導入法の開発のため、Donor-cell(キメラ抗原蛋白の提供側細胞)としてK562にCAR遺伝子(anti-CD19-BB-z)をレトロウイルスで導入し、検討に用いた。KIR遺伝子型の実臨床上の意義の検討のため、造血器腫瘍に対するヒト同種造血細胞移植をモデルとして、KIR遺伝子型と移植後再発やGVHDなどとの関係を解析した。 健常成人NK細胞のIn vitro解析では、NKG2DハプロタイプのNK細胞機能に与える有意な影響を確認した。さらにKIR遺伝子型やKIRハプロタイプによるサイトカイン産生能の相違が観察された。Trogocytosis についてはDonor-cellにおけるCAR発現の増加によりTrogocytosisの向上が得られたが、臨床応用上は十分なレベルとは言えず、今後さらなる改良が必要と考えられた。ヒト同種移植の検討では、当施設で行った同種造血幹細胞移植コホートにおいて、ドナーDNAを用い15のKIR遺伝子をタイピングし、ハプロタイプやKIRミスマッチの有無を判定し、臨床成績との相関を検討したところ、ドナーKIR遺伝子ハプロタイプが移植成績に有意な影響を及ぼしていることが判明した。より多数かつ背景因子の揃った別コホートで検討を重ねるべきと考えられた。
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