研究課題/領域番号 |
25461583
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
大嶋 勇成 福井大学, 医学部, 教授 (40303391)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 食物アレルギー / 経皮感作 / IgE / 動物モデル |
研究実績の概要 |
前年度までの研究結果に基づき、活性化ビタミンD3のアナログであるMC903をアジュバントとしてマウス耳介に塗布後、抗原としてオボアルブミンOVAを塗布し、経皮感作を行った。経皮感作成立後に、初回のOVAの経口チャレンジを行い即時型下痢症状と低体温が誘発されることを確認した。初回チャレンジの14日後に2回目の経口チャレンジを行うと程度は軽くなるものの即時型下痢症状と低体温が誘導される条件を決定した。その上で、初回経口チャレンジ後に、抗原感作を行った耳介にOVA塗布を行わず、MC903のみを反復塗布して皮膚の炎症を増悪させた場合と、MC903の溶媒として用いたエタノールのみを反復塗布した場合とで、2回目の経口チャレンジで誘発されるアレルギー症状がどのように変化するかを観察した。その結果、MC903の反復塗布を行うと、耳介の皮膚の肥厚と皮膚炎の増悪を認めると共に、2回目の経口チャレンジで誘発される即時型下痢症状は、初回の経口チャレンジで誘発される症状より増悪した。一方、コントロールのエタノール塗布では、皮膚炎の増悪と誘発症状の増悪は認めなかった。また、OVAの経口チャレンジ後には感作部位である耳介の腫脹が観察されるが、MC903を反復塗布した群ではチャレンジ後の耳介腫脹の増強を認めるのに対し、コントロール群では耳介腫脹は軽減していた。MC903の反復塗布は、血清OVA特異的IgE値には有意の変化を与えなかったが、2回目のチャレンジ前の血清中MMCP1値の上昇と、チャレンジ後の更なる上昇が認められた。これらの結果から、MC903により皮膚炎を悪化させると皮膚への直接の抗原暴露がなくても、消化管粘膜の肥満細胞の活性化が維持され、その後の症状増悪に関与すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビタミンDアナログをアジュバントとして用いて新たな経皮感作による食物アレルギーモデルを作成できていること、抗原感作部位となる皮膚に対する介入が、経口チャレンジによる誘発症状に影響を与えることが確認できるシステムと考えられることから、アトピー性皮膚炎に食物アレルギーを合併した患者における、アトピー性皮膚炎の管理法が食物アレルギーにどのような影響を与えるかを評価するモデルに応用できると考えられる。また、食物アレルギーの免疫療法となる皮膚病変への介入方法のスクリーニングに応用できると考えられるため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
経皮感作により発症する食物アレルギーは、抗原感作を行った皮膚への抗原再暴露がなくても皮膚炎が増悪することにより、その後の経口抗原チャレンジにより誘発されるアレルギー症状を修飾することが明らかとなった。この結果からから、感作部位となった皮膚に対し介入を行い皮膚炎症状を抑制することが、食物アレルギーの増悪抑制になると期待される。今後は、皮膚炎をどの様な方法で予防・抑制することが最も効果的に食物アレルギー症状増悪を抑制できるのかを検討する。具体的には、感作を行った皮膚局所に、起炎症性の反応に関わるシグナル伝達系分子の阻害剤を塗布することで、抑制効果が得られかどうかを検討する。抑制効果が得られた場合いは、制御性細胞や抑制性サイトカインなどのどの様な経路が重要であるかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、動物モデルの症状誘発のために至適投与法を検討したため、前年度に購入した試薬を用いることで実験を遂行することができたため、試薬代が想定したほど必要ではなかった。また、予備実験が主であったこともあり実験補助員の協力をそれほど必要としなかっため、人件費を節約することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
動物モデルが確立したことより、各種阻害剤を用いた検討を行う予定であるため、次年度への繰り越し金は、阻害剤の購入費用に充てる予定である。また、阻害剤の効果スクリーニングでは同時並行で実験を行う予定であるため、実験補助員の協力が必須となるので、その人件費に使用する予定である。
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