前年度までの研究成果に基づき、抗原としてオボアルブミンOVAを活性化ビタミンD3のアナログであるMC903をアジュバントとして用いマウスの耳介に反復塗布することで経皮感作を行った。その後、OVAの経口チャレンジで即時型アレルギー性下痢症状を惹起した後、MC903塗布の反復塗布により耳介の皮膚炎を増悪させておくと、2回目の経口チャレンジで誘発されるアレルギー下痢症状の増悪を認める。MC903を耳介に塗布する代わりに、マウスの背中の皮膚を除毛し、テープストリッピングを行うことで物理的刺激による皮膚障害を加えても2回目の経口チャレンジでの誘発症状の悪化を認めた。MC903の塗布による皮膚炎の増悪をデキサメサゾンの塗布により抑制すると、2回目の経口チャレンジにより誘発されるアレルギー性下痢症状は軽快した。これらの結果から、経皮感作により食物アレルギーを発症した場合、抗原の経口および経皮曝露を回避しても、皮膚炎症状を悪化させておくと、抗原の経口摂取により惹起される食物アレルギー症状は増悪することが明らかとなった。また、抗原除去に加え、皮膚炎症状の改善を図ることが、経皮感作による食物アレルギーを軽快させる上で重要と考えられた。乳児期のアトピー性皮膚炎では食物アレルギーを合併することが多い。アトピー性皮膚炎に合併する食物アレルギーの増悪を防ぐには、食物除去を行うだけでなく、アトピー性皮膚炎の皮膚症状のコントロールも重要であると考えられた。
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