研究課題/領域番号 |
25461584
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
安冨 素子 福井大学, 医学部, 助教 (80554526)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 食物アレルギー / オートファジー / 免疫学 / 経口免疫寛容 |
研究概要 |
オートファジーとは細胞構成成分を二重膜のオートファゴソームと呼ばれる食胞に閉じ込めてライソゾームへ運搬し、ライソゾームと融合して内部物質を分解する機能である。細胞の恒常性維持に重要な役割を果たしているが、即時型アレルギーにおいて重要な肥満細胞の脱顆粒にも重要である。またその遺伝子多型は炎症性腸疾患であるクローン病の疾患リスク因子でもあり、オートファジーが腸管免疫において重要な役割を果たすことが推測される。そこで我々は食物アレルギーにおけるオートファジーの役割を明らかにするため、食物アレルギーマウスモデル(卵白抗原で腹腔内感作し、卵白抗原を経口投与することで肥満細胞の脱顆粒を伴う下痢、低体温などの即時型アレルギー症状が出現するモデル)の腸管におけるオートファジーの活性化を評価した。OVA投与後に腸管蛋白を抽出し、オートファジー活性化の指標としてLC3 IからIIへのconversionを評価したところ、抗原負荷後に変化がみられた。そこで抗原負荷時にオートファジー活性化を修飾する因子を併用したところ、アレルギー症状が抑制された。機序を解明するために肥満細胞の活性化を評価したところ、脱顆粒が抑制されていた。腸管所属リンパ節の抗原特異的細胞増殖は抑制されず、抑制機序は非特異的な免疫応答の抑制ではないと考えられた。アレルギー症状抑制にはたらくサイトカインIL-10の産生増強は明らかではなかった。またアレルギー症状の抑制に働くと考えられる腸管分泌型抗原特異的IgAの産生については現在検討中である。食物アレルギーにおけるオートファジーの役割を明らかにし、修飾因子でアレルギー症状を抑制できれば、すでに抗原に感作された患者においてもアレルギー症状を抑制する、これまでとは全く異なる機序を介した有用なツールとなりうると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の実施計画に記載した項目は概ね施行できているため。
|
今後の研究の推進方策 |
肥満細胞の活性化が抑制されることが判明し、もともと肥満細胞の脱顆粒が抑制されているオートファジー関連遺伝子欠損マウスを使用することが、必ずしも今後の実験に有用とは限らない可能性が出てきた。腸管より蛋白を抽出しwestern blottingでLC3を評価する際に、免疫沈降法などで各リンパ球に特異的な細胞表面マーカーなどを併用して、リンパ球の関与について検討を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
肥満細胞の活性化が阻害されることが判明し、もともと肥満細胞の脱顆粒が抑制されているオートファジー関連遺伝子欠損マウスを用いて解析することが必ずしも妥当ではない可能性が出てきたため、高額なオートファジー関連遺伝子欠損マウスを購入しなかったため。 免疫沈降法でLC3 IIに結合する細胞表面マーカー蛋白を同定することを考えている。LC3II蛋白発現量が非常に少ないため、蛋白を十分量採取する必要がある。transferをセミドライ法で行っているが、LC3II蛋白の回収が非常に少ないため、wet法に変える、実験に用いるマウスを増やすなどの工夫が必要である。このため実験に用いる試薬、マウスの維持・購入費用が増加、機材の購入が必要であり、これらにあてる。また3MA以外のオートファジー抑制物質を実験に用いて作用機転を明らかにする必要があり、今後これら試薬の購入が必要である。
|