研究実績の概要 |
本研究は、神経芽腫細胞におけるインスリン様増殖因子(IGF)受容体、およびインスリン受容体を介したシグナルの細胞内伝達機構を解析し、神経芽腫細胞において、生存・増殖機構として機能しているか否かを明らかにすることを目的としている。 神経芽腫細胞の増殖におけるIGF/インスリン依存性には差異が認められ、前年度までの検討によって、3つのグループに分類できることが明らかになった(Cancer Science 104:1162, 2013)。今年度においては、神経芽腫細胞のIGF/インスリンによる細胞増殖シグナルは、PI3K-AKT経路の活性化をきたしており、AKT阻害剤であるMK2206の添加によって、神経芽腫の細胞増殖は著しく抑制されることが明らかとなった。さらに、MK2206による細胞増殖阻害作用に対して耐性を獲得した神経芽腫細胞株においては、PDK1を介してmTOR-S6K経路が活性化し細胞増殖が誘導されている細胞群とPDK1に依存しない経路によりmTOR-S6Kが活性化されている2つの細胞群が存在していた。また、両細胞群とも、mTOR阻害剤であるAZD8805により細胞増殖、細胞回転の抑制が誘導された(Cancer Cell Int. 15:91, 2015)。 以上の結果より、神経芽腫細胞におけるIGF/インスリン刺激による細胞増殖シグナルは、AKT-mTOR-S6K経路、PDK1-mTOR-S6K経路、あるいは、その他の経路により活性化されるmTOR-S6K経路のいずれかを介していることが明らかになった。mTOR-S6K経路は、いずれの神経芽腫にも共通する増殖シグナル伝達経路であり、神経芽腫の治療標的となり得ることが示唆された。
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