研究課題
基盤研究(C)
本研究では、体細胞モザイクCINCA患者由来iPS細胞株を用いて、研究期間内に以下の2つの目標を達成する。1) ヒト発生における体細胞モザイクの系統樹を作製し、iPS細胞を用いた体細胞モザイク解析技術の基盤を確立する。2) NLRP3インフラマソームを阻害する化合物の作用機序を明らかにし、NLRP3制御による慢性炎症抑制薬開発のシーズを得る。1)体細胞モザイクの細胞系譜の解析については、樹立したiPS細胞クローンそれぞれについて、Exome解析を行った。このデータを元に、クローンごとの遺伝子変異(Single nucleotide variations:SNV)のパネルを作製した。次に、得られたクローンごとの体細胞変異を用いてunbiased clusteringを行った。すると、NLRP3変異の有無によって他の体細胞変異の有無についても別のクラスタに分類されることがわかり、体細胞系譜をiPS細胞を用いて解析することが可能であることが示唆された。2) NLRP3インフラマソーム阻害薬の作用機構解明については、すでに同定した化合物Xについて、再検を繰り返したところ、十分な再現性が得られなかったため、スクリーニング系の再構築と、新たな化合物探索が必要と考えられた。このため、まず、患者由来iPS細胞由来単球の株化を行った。熊本大学の千住先生らが開発した遺伝子導入法により、未熟単球系細胞の株化に成功した。この細胞は、マクロファージへ分化させることにより、プライマリ単球と同様の反応性を示した。さらに、この細胞株を用いたスクリーニング系の構築に着手した。
3: やや遅れている
1) 体細胞モザイクの細胞系譜の解析については、おおむね順調に推移しており、iPS細胞を用いたクラスタリング解析により、有用な情報が得られたため、次年度以降も研究計画通りに遂行することが可能と期待される。2) NLRP3インフラマソーム阻害薬の作用機構解明については、すでに同定していた化合物Xについて、適切な再現性が得られなかったため、スクリーニング系の再構築に着手している。このため、当初の計画通りの進捗は得られなかったが、一方で単球の株化に成功したことにより、均質な品質の患者由来細胞を大量に得ることが可能となったため、より安定した高スループット化合物スクリーニング系が開発できている。このため、来年度以降の研究の進展が期待できる。
1) 体細胞モザイクの細胞系譜の解析については、引き続いてiPSCのクローンに認められた変異について、線維芽細胞でdeep sequenceを行い、当該変異が線維芽細胞のうちどの程度の割合に認められるかを評価する。線維芽細胞の一部の細胞とiPSCの一部のクローンに認められる変異の変異の頻度を線維芽細胞と患者血球・毛髪・爪由来のDNA(体細胞由来DNA)との間で比較する。もし体細胞由来DNAで変異が見つかれば、患者は全身性の体細胞モザイクであるということになる。この場合、各変異がNLRP3変異と比較してどの時期に入ったのかということが、細胞系譜を書くことによって判明する。2) NLRP3インフラマソーム阻害薬の作用機構解明については、スクリーニング系の構築を継続し、その後新規化合物のスクリーニングを実施し、候補化合物を得る。当該化合物がNLRP3インフラマソームの活性化を阻害するのかを検討する。まず、化合物の作用点を同定するために、NLRP3の下流分子であるASC、Caspase-1及びIL1b分泌のいずれの段階が抑制されているかを確認する。使用する細胞はヒトプライマリ単球、CINCA患者由来iPS細胞より分化させた単球(NLRP3変異あり/なし)を予定しており、NLRP3インフラマソーム活性化刺激としてLPS(リポ多糖)+ATPまたはLPS+silicaを用いる。
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