本研究では、体細胞モザイクCINCA患者由来iPS細胞株を用いて、研究期間内に以下の2つの目標を達成する。1) ヒト発生における体細胞モザイクの系統樹を作製し、iPS細胞を用いた体細胞モザイク解析技術の基盤を確立する。2) NLRP3インフラマソームを阻害する化合物の作用機序を明らかにし、NLRP3制御による慢性炎症抑制薬開発のシーズを得る。
1について、前年度得られたクラスタリングデータをもとにNLRP3変異細胞と正常細胞に特徴的な遺伝子変異を解析した。結果、いくつかの遺伝子変異によって、それぞれの群がさらにサブクラスタに分けられることが判明した。また、新規遺伝子変異を持つCINCA症候群患者のiPS細胞を作製し、単球分化させてIL-1b産生を評価し、この患者さんが体細胞モザイクであることを確認した。
2について、CINCA症候群患者由来iPS細胞から誘導した単球細胞株を樹状細胞とマクロファージへ分化させた。樹状細胞に分化させ、さらに成熟させると、樹状突起をもつ典型的な細胞形態が観察された。また、樹状細胞の成熟に伴って、CD11c,CD80,CD86が細胞表面に発現した。一方、マクロファージへと分化させると、M1/M2への分化が可能であった。次に、CINCA-iPS-MLMPを用いた高スループットスクリーニング系を構築するために、既存のIL-1b産生経路阻害剤が用量依存的にサイトカイン産生を阻害するか検討した。検討の結果、既存薬が用量依存性にサイトカイン阻害を行う条件を決定した。最終年度は重点的に検討を行った。CINCA症候群患者由来iPS細胞から分化誘導した単球を用いて、LPS刺激下にサイトカイン産生を抑制する化合物を既存薬ライブラリより探索した。
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