研究課題
基盤研究(C)
急性脳炎・脳症は小児の重篤な脳神経後遺症あるいは死亡の原因疾患として重要である。病初期に採取された脳脊髄液中の生体マーカーが予後予測に有用かどうか検討した。3つのマーカー、S-100B、GFAP、tauを計測した。すべてのマーカーが予後不良群で有意に高値であった。予後予測の正診率はそれぞれ91%、74%、78%であった。複数のスコアでポイント化した場合、S-100B + tau、あるいは、S-100B + GFAP + tauの組み合わせにより、正診率はそれぞれ100%、96%に向上した。小児の危急・難治疾患の代表である急性脳炎・脳症の急性期において、これらのマーカーの診断的有用性が示された。パンデミックインフルエンザ感染症において、遺伝子マイクロアレイの解析では脳炎・脳症群と肺炎群で急性期の遺伝子発現が異なっていた。脳炎・脳症群ではCOX2関連の異常、肺炎群では抗酸化酵素関連の異常が目立っていた。それらの病態生理・治療方略を理解する上で重要な知見と考えられた。新規開発中の尿中L-type fatty acid binding protein(L-FABP)迅速計測スライドの基礎的有用性を検討した。L-FABP(迅速スライド)は20 ng/mL(あるいは100 ng/mg Cr)前後で陽性を呈したが、この値は急性腎障害発症予測のカットオフ値に相当した。過去の慢性腎疾患の検討では、軽度尿所見や多剤併用だけでは尿中L-FABPは20 ng/mL(あるいは100 ng/mg Cr)を超えなかった。FABP迅速計測スライドは、緊急を要する医療現場で(不便な環境でも)応用可能と期待された。小児の危急・難治疾患として重要な胎盤機能不全、気管支喘息における酸化ストレス、レドックス破綻の重要性、新規治療開発の必須性をレビュー論文としてまとめた。
2: おおむね順調に進展している
小児危急疾患、難治疾患のいくらかの疾患で、酸化ストレス、レドックス制御に関連する生体応答マーカー計測が有用であることが示された。また、尿を用いた迅速診断キット開発の基礎データが得られた。この研究の重要性を広く知ってもらうために、レビュー論文もまとめた。
当初の研究計画書に従い、研究を推進していきたいと考えております。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)
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