酸化ストレスは、内部・外部刺激により生体内で活性酸素群(活性窒素も含む)が抗酸化システムで捕捉しきれないほど過剰に生じる状況である。小児の急速進行性疾患、慢性遷延性疾患ではしばしば酸化ストレスが増幅され、生体の構造や機能が酸化劣化を受けて、組織障害が不可逆的に進展する。これらの疾患の治療、管理において酸化ストレスを制御することが重要である。そのためには酸化ストレスの病態生理、それへの防御機制を把握し、特異的マーカーを用いて患者の酸化ストレス環境を非~低侵襲的に評価することが必要である。小児医療の現場で実施される種々の治療は酸化ストレス制御を目指すものでもあるが、今後は“レドックス”に関連してより特異性の高い細胞機能修飾薬が開発され、それらが重症疾患への集学治療の中に組み込まれていくことが期待される。 一酸化窒素(nitric oxide: NO)はNO合成酵素によりarginineと酸素を基質にしてcitrullineとともに合成される。血管内皮由来NO生成を維持することは生体のレドックス環境を保持するうえで必須である。一方、arginine-NO合成は内因性NO合成酵素阻害因子asymmetric dimethylarginine、citrulline-arginine recycling、arginine-ornithine経路と連結する。酸化ストレス亢進はarginine-NO合成を抑え、asymmetric dimethylarginine生成を上げ、citrulline-arginine再循環を抑え、arginine-ornithine経路を刺激し、血管内皮機能をさらに障害する(“vicious cycle”を形成する)。arginineを中心とする代謝ネットワークは先天性尿素サイクル異常症だけでなく、様々な疾患で血管障害を含めた多彩な合併症の病態生理や治療を考察する上で重要である。
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