研究課題
本研究の目的は、7価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV7)接種前後の抗体価とオプソニン活性、インフルエンザ桿菌b型結合ワクチン(Hibワクチン)接種前後の抗体価と血清細菌活性を測定し、それぞれを健常児と免疫不全児および早産児との間で比較することで、免疫応答が低下している小児におけるPCV7とHibワクチンの有効性を検討することに加えて、ワクチン低感受性者の要因を探るために、末梢血リンパ球サブセット(特にメモリーT、B細胞の割合)や口腔内常在菌叢パターンの違いなどを解析し、これらの結果をもとに免疫応答が低下している小児への最適なワクチンスケジュールの確立を目指すことである。今年度は、昨年度までに得られたデータの解析を行った。免疫不全小児のうち、造血幹細胞移植後の症例ではPCV7接種後の血清型特異的IgG抗体価およびオプソニン活性が健常児と比較して有意に低下していた。また、メモリーB細胞数およびCD4陽性T細胞数も有意に少なく、これらの症例のPCVに対する免疫応答低下には、前述した細胞数の減少が関与している可能性が示唆された。免疫応答の低下と肺炎球菌の保菌との関連については、対象症例の中に、PCV7に含まれている血清型の肺炎球菌を保菌している症例がいなかったため、調べることはできなかった。今回の結果から、造血幹細胞移植後の小児(特に1歳以上)に対する結合型肺炎球菌ワクチンの接種は、通常のワクチンスケジュールでは不十分であり、追加接種が必要であると考えられた。また、これまで報告されている、CD4陽性T細胞数だけでなく、メモリーB細胞数の推移も免疫応答のモニタリングに役立つ可能性が示唆された。
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Journal of Infectious Diseases
巻: 213 ページ: 848-855
10.1093/infdis/jiv469