昨年度までに行った実験では、WT1蛋白の断片を認識できる糖鎖が、WT1蛋白全体を認識できていない可能性があると考えられた。このため今年度はWT1蛋白から得たペプチド断片から25~30塩基のペプチドを新たに2種類合成した。これらに特異的に結合する糖鎖をスクリーニングする目的で、糖鎖を固定化したバイオデバイスであるシュガーチップを用い、次にこの糖鎖と金粒子を結合させWT1特異的ナノ粒子を作成した。 また、シタラビンの細胞毒性によるWT1蛋白の抽出量が少なく、ナノ粒子が認識できてない可能性があったため、シタラビンをシクロホスファミドに変更し、細胞毒性を高めた。 1 x 106個/10mlのCCRF-CEMの培養液に濃度系列のシクロホスファミドを添加し、24~48時間培養し、細胞死を惹起した。MTTアッセイで検討すると、シクロホスファミド+代謝剤の添加によってシクロホスファミド0~250μMまでは、細胞死の割合は直線的な相関を示した。24時間と48時間では有意な差は認めなった。次に同様の条件で、250μMのシクロホスファミド添加し、24時間培養した細胞培養液上清を用い、希釈系列を作り、ナノMRD法で測定した。上清の原液では、通常のELISA法では0.17±0.05ng/mlであったが、ナノMRD法では、7.35±0.63ng/mlであった。ナノMRD法では、32倍希釈まで測定可能であった。1~4倍希釈での検討では、通常のELISA法に比べて、ナノMRD法は50.8±8.0倍高感度であった。 結論:WT1を対象としたナノMRD法は、白血病の残存病変の評価として有用である。
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