研究課題/領域番号 |
25461602
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
桑原 康通 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30590327)
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研究分担者 |
細井 創 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20238744)
家原 知子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20285266)
土屋 邦彦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90381938)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 悪性ラブドイド腫瘍 / SNF5 / NOXA |
研究概要 |
【背景】Malignant rhabdoid tumor(以下 MRT)では、ほぼ全例で hSNF5(INI1) の機能喪失が認められている。そのため、MRT の腫瘍原性の解明にはhSNF5の機能解析が重要と考えられている。近年、proapoptotic proteinの1つであるNOXAが、hSNF5 により直接転写活性を受けることが報告された。NOXAは Bcl-2 ファミリーに結合・阻害し、アポトーシスを誘導する。今回、hSNF5の機能喪失によるNOXA の発現低下が、MRTにおけるapoptosis 誘導機構に及ぼす影響と薬剤感受性の関係を解析した。 【方法】1)MRT 細胞株のNOXA の発現を hSNF5 の正常な他の小児固形腫瘍とWester blot法と定量的PCR法で比較した。2)NOXA安定発現MRT細胞株を樹立し、doxorubicin(DOXR)の感受性とアポトーシス誘導効果をコントロール群と比較した。3)MRT細胞株に対してsiRNAによるMcl-1のノックダウンを行い、DOXRの感受性とアポトーシス誘導効果をコントロール群と比較した。 【結果】MRT細胞株では、他の固形腫瘍の細胞株に比べ NOXAのmRNAとタンパク発現が相関して低下していた。NOXA安定発現群は、DOXRのIC50がコントール群に比べ60%低下し、アポトーシスが誘導された。また、NOXA安定発現群では増殖能が抑制された。Mcl-1ノックダウン群ではDOXRのIC50が90%低下した.この時,アポトーシスが誘導されていることを確認した. 【考察と結語】MRT では hSNF5 欠損によってエピジェネティックに NOXA の発現が抑制されている。そのため、MRTではNOXA と Mcl-1 との結合を介したアポトーシスが阻害され、薬剤抵抗性を獲得していることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は①MRT細胞株に化学療法の薬剤(ドキソルビシン:DOX)を投与しIC50を算出し、この細胞死がアポトーシスか、フローサイトメーター、western blot 法で確認する。 ② MRT細胞株にNOXAを導入し、NOXA導入により細胞増殖における影響を検討する。NOXA遺伝子の発現がMRTの病態に及ぼす影響を検討する.さらに、NOXA発現MRT細胞株に薬剤を添加して効果が増強されるかを確認する. ③Mcl-1をノックダウンし、コントロール細胞株とMcl-1ノックダウン細胞株での薬剤感受性を比較する。以上で、NOXA/Mcl-1の経路がDOXによるアポトーシス誘導に必要であることを解明する。以上であったが、NOXA安定発現MRT細胞株を樹立し、doxorubicin(DOXR)の感受性とアポトーシス誘導効果をコントロール群と比較しまた、MRT細胞株に対してsiRNAによるMcl-1のノックダウンを行い、DOXRの感受性とアポトーシス誘導効果をコントロール群と比較し結果を得ることができた。したがって、今後、マウスでの実験や阻害剤の実験に移行することが順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
NOXAとMcl-1の経路がMRTの薬剤感受性に関与していることが示唆される結果を得て、マウスの実験と薬剤併用の実験をおこなう。 現在、Mcl-1を含むBcl-2ファミリーに対する阻害剤がphase1、またはプレクリニカル段階で開発されている。中でも、Mcl-1に親和性の高いSW-37をMRT細胞株に添加すると単剤でも効果がある。SW-37を他の化学療法薬剤との併用で相乗効果があるか検討を行う。 TW37がMRT細胞株でMcl-1の機能を阻害しているかを、免疫沈降法、Western blot法で確認する。また、低濃度の範囲でTW37を投与し化学療法薬剤との相乗効果を検討する。 また、MRT細胞株をNOGマウスの皮下に移植し、in vivoでのSW-37、DOXとTW37併用の効果を検討する。さらに、MRTの臨床検体の検討を行うためのサンプルの準備に取り掛かる予定である。
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