研究課題/領域番号 |
25461607
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
中山 哲夫 北里大学, その他の研究科, 教授 (60129567)
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研究分担者 |
柏木 保代 東京医科大学, 医学部, 講師 (00287129)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ワクチン / 同時接種 / サイトカイン / 筋注 / 皮下接種 / 筋拘縮症 |
研究概要 |
1)同時接種の安全性 肺炎球菌(PCV)を含んだ同時接種で発熱率が高くなる原因を検索した。ヒト末梢リンパ球をPCVで刺激するとIL-1β、Hibで刺激するとIL-6産生を刺激し、PCV/Hib/DPTの3種類のワクチン刺激でIL-1β,IL-6, TNF-αの産生能が増強した。同時接種後発熱例(61例)と発熱を認めなかった例(18例)の血清中のサイトカインを検討しIL-1β,IL-6, TNF-αの炎症性サイトカインは通常の健康児よりは高いが両群では差は認めなかった。一方、G-CSFが発熱児では高値を示した。 2)ワクチン筋注と皮下接種 1960年代から抗菌剤と解熱剤の混注による筋拘縮症が問題となり、ワクチン接種では問題はなかったが、筋注の医療行為は封印された。広範な筋組織の破壊と萎縮が認められヒトの所見は実験動物で再現できる事から、ワクチンの筋注が筋拘縮症の病態を起こさず、現在行われている皮下接種と同等の安全性を有する事を証明するために現行のワクチンをBALB/cマウスに接種し検討した。アルミを含まないワクチンは接種後極めて軽度の限局的な炎症所見を認めるか、何も所見を認めない。アジュバントを含有したワクチン接種では炎症性肉芽腫を形成し結節は数ヶ月から1年は残るが,局所の炎症所見は1カ月をすぎると治癒機転にあることが明らかとなった。 すべての有効なワクチンは自然免疫系に刺激を入れてサイトカインを誘導することが知られておりワクチン接種48時間後まで筋組織内、および血清中のサイトカインを測定した。アルミとMPLの複合アジュバントを用いたサーバリックスは48時間までに非接種側の数10倍から数100倍高いIL-1β,IL-6, G-CSFを産生しており他のワクチン接種でも5倍近く増加しているがTNF-αは変化が認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)同時接種 2010年に認可されたHib, PCV, DPTの組合わせによるリンパ球のサイトカイン産生能を検討し。PCVを含む同時刺激で炎症性トカインの産生が上昇した。このことから同時接種後発熱を呈した例では炎症性サイトカインが高値を示すことが予測された。発熱症例を集めて血清サイトカインを検討するために2011年から小児科臨床医との共同研究を開始した。ワクチン接種後に発熱を認めた61例、発熱を認めなかったコントロール18例の48時間以内の血清のサイトカインを測定した結果IL-1β,IL-6, TNF-αには差がなくG-CSFのみが発熱児では高値を示し、発熱のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。 2)筋注と皮下注 2013年Hib, PCV7, HPVが定期勧奨接種のワクチンとなったが、HPVワクチン接種後の失神、慢性疼痛が問題となりHPVワクチンの接種は一次中断されている。現行の勧奨接種のワクチン接種後の筋組織の病理所見を検討しかつての筋拘縮症の所見はない事を明らかとした。一連の研究の中でHPVのワクチン接種後の検討も始めておりサーバリックスは他のワクチンと異なり1カ月後でマクロファージ結節を形成し急性期の48時間のサイトカインの動態を明らかにした。ワクチン接種は急性期にはIL-1β,IL-6, G-CSFの産生が認められ急性期の疼痛には関与するが1か月後の細胞はマクロファージに変わり炎症の修復起点に入っており慢性的に炎症反応が続くような所見は得られなった。研究成果の一端がタイムリーな問題解決の一助となった。
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今後の研究の推進方策 |
1)同時接種 2社のDPT/IPVの単独刺激でのサイトカイン産生能は差がないがHib, PCVとの同時刺激では差が認められ、基本となるDPTのサイトカイン産生能に差があることが想定されDPTのサイトカイン誘導能を検討する。また、野生株ポリオ不活化ワクチンとDPTの多価ワクチンについても検討を行う。 2)筋注と皮下注 ワクチン接種後発熱は48時間以内に出現することから25年度にはワクチン接種3、6、24、48時間後に局所と血清中のサイトカン産生能を検討した。アルミアジュバントは接種後G-CSFを誘導し48時間までの組織所見では好中球が遊走し,好中球は自己融解しneutrophil extracellular traps (NETs)を形成し細胞成分や自己核酸の漏出が自然免疫のDAMPsに刺激を入れる。その後1カ月後にはマクロファージに代わってくる。25年度の検索は組織の形態学的は所見で、炎症細胞の同定を好中球、マクロファージの膜抗原の免疫組織染色をおこなう。また、好中球がNETsと関連しているかを免疫組織染色を行う。48時間までの局所のサイトカインと血清サイトカインを測定しサーバリックス接種48時間までIL-1β,IL-6,、G-CSFは増加し、1カ月後ではM1マクロファージだけでなくM2-likeマクロファージも存在し炎症所見は治癒機転にあることが平成25年度までの検査で明らかとなった。48時間後から1カ月後までの24h、48h、5日、1週、2週、1カ月、更に追加接種後の2、5、7日後の局所のサイトカインプロファイルを検討することで炎症反応の修復機序が明らかとなる。
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次年度の研究費の使用計画 |
少額の残金であり、新たに試薬等を購入するにも中途半端な額であった。 次年度の交付と合わせて消耗品として使用する。
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