研究課題/領域番号 |
25461608
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
嶋田 博之 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80265868)
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研究分担者 |
嶋 晴子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80424167)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 慢性骨髄性白血病 / フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 / IKZF1遺伝子 / ゲノム解析 / トランスクリプトーム解析 |
研究概要 |
本研究目的は、小児Ph 染色体陽性白血病細胞の特性を多角的に明らかにし、創薬・診断・予後判定等の標的候補探索を行ない、その成果を小児Ph 染色体陽性白血病細胞の発症機構解明や新規診断・治療法開発に応用することである。 本年度は計画通り、JPLSGで実施中の臨床研究に登録した患者から小児Ph+ALLおよび小児CMLの試料の収集を行った。ゲノム解析として、小児Ph+ALL40例を対象にMLPA法によるIKZF1欠失の解析を行った。年齢は中央値6.5歳(2歳~15歳)、男31例、女9例。40例中、IKZF1欠失を認めた症例は31例(78%)であり、IKZF1欠失あり群となし群(9例)に分けて、IKZF1欠失の有無と予後との関連を検証した。その結果、4年生存率は、IKZF1欠失なし群が100%であったのに対し、IKZF1欠失あり群は71%だった(P=0.0989)。また4年無イベント生存率(EFS)はIKZF1欠失なし群が89%であったのに対し、IKZF1欠失あり群は42%と有意(P=0.0345)に低かった。EFSの多変量解析では、IKZF1欠失あり(相対リスク8.89)とプレドニゾロン反応性不良(相対リスク3.58)が独立した予後不良因子となった。さらに、IKZF1欠失あり群をドミナント・ネガティブおよび両アレル欠失による機能消失型(21例)とハプロ不全型(10例)に分けて予後を検討した結果、4年無病生存率(DFS)率はハプロ不全型が75%であったのに対し、機能消失型は39%と有意(P=0.0189)に予後不良であった。4年生存率もハプロ不全型が90%であったのに対し、機能消失型は62%で予後不良の傾向を認めた(P=0.0555)。これらの結果より、Ph+ALLが難治性であるのはPh染色体の形成よりも、予後不良因子であるIKZF1欠失の頻度が高いこと、とくに機能不全型の頻度が高いこと(欠失例のうち68%)が原因と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
倫理面による実施計画書作成の遅れから、次世代シークエンスによるゲノム解析、エピゲノム解析、トランスクリプトーム解析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度中に、既に保管されているJPLSG Ph+ALL04臨床試験に登録された小児Ph染色体陽性ALL細胞から抽出したゲノムDNAおよびRNAを用いて、マイクロアレイによるゲノムコピー数の解析および網羅的な遺伝子発現解析、および次世代シークエンサーによる付加的キメラ遺伝子の同定を行う。既に保管されているJPLSG CML08臨床研究に登録された小児CML細胞から抽出したゲノムDNAおよびRNAを用いて、同様の解析を行う。さらに、臨床データを比較することにより予後因子の検討を行う。
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