研究課題
小児myelodysplastic syndrome(MDS)とjuvenile myelomonocytic leukemia(JMML)の発症分子機構を解明するために,それぞれ40例を対象にして、これまでPTPN11、RAS、CBLなどの既知の遺伝子異常の解析と全エクソン解析を行ってきた。今年度はGCSF受容体であるCSF3R遺伝子のエクソン14、17とCALR遺伝子のエクソン9の解析を行った。CSF3R遺伝子の変異はMDSとJMMLではみられなかったがAMLでは534例中10例(1.87%)に変異がみられた。CALR遺伝子の変異は血小板増多症 (ET) 21例中1例にみられたが、MDSとJMMLではみられなかった。小児ETでのCALR遺伝子の変異は本邦では初症例である。非ダウン症候群急性巨核芽球性白血病(non-DS-AMKL) 43例中CBFA2T3-GLIS2を12例(27.9%)、NUP98- JARID1Aを4例(9.3%)、OTT-MALを10例(23.6%)、MLL-AF9を2例(4.7%)、MLL-AF10を1例(2.3%)認め、OTT-MAL以外は予後不良であった。これらの症例におけるFLT3-ITD、KIT、RAS、WT1の各変異とMLL-PTDは比較的稀であった。またダウン症候群のTAMからMDS/AMLへの移行につきエクソーム解析とターゲットリシーケンスを行った。TAMは21トリソミーとGATA1変異のみで発症すること、MDS/AMLへの移行にはコヒーシン複合体が53%、EZなどのエピゲノムの制御因子が45%、RAS/チロシンキナーゼなどのシグナル伝達系分子が47%の遺伝子の変異が関与することを明らかにした。またTAM細胞を移植したNGOマウスの作整とiPS細胞樹立によりTAMからMDS/AMLへの移行の機序の解明に貢献できた。
2: おおむね順調に進展している
小児MDSとJMMLの発症分子機構を解明するために,これまで小児MDS 40例とJMML40例で既知の遺伝子異常の解析と全エクソン解析を行ってきた。今年度はGCSF受容体であるCSF3R遺伝子のエクソン14、17とCALR遺伝子のエクソン9の解析を行った。CSF3R遺伝子の変異はMDSとJMMLではみられなかった。AMLでは534例中10例(1.87%)に変異がみられた。エクソン14では2例が(PoT618I)、エクソン17では8変異(3例がframe shift変異、5例がミスセンス変異)であった。エクソン17に変異がみられた症例はすべてt(8;21) 5例を含む転座がみられ、10例中7例が生存中であった。CALR遺伝子の変異は血小板増多症(ET) 21例中1例にみられたが、MDSとJMMLではみられなかった。AMLでは534例中10例(1.87%)に変異がみられた。小児ETでのCALR遺伝子の変異は本邦では初めての症例である。融合遺伝子の解析では、non-DS-AMKL 43例中CBFA2T3-GLIS2を12例(27.9%)、NUP98- JARID1Aを4例(9.3%)、OTT-MALを10例(23.6%)、MLL-AF9を2例(4.7%)、MLL-AF10を1例(2.3%)認め、OTT-MAL以外は予後不良であった。またダウン症候群のTAMからMDS/AMLへの移行につきエクソーム解析とターゲットリシーケンスを行った。TAMは21トリソミーとGATA1変異のみで発症すること、MDS/AMLへの移行にはコヒーシン複合体が53%、EZなどのエピゲノムの制御因子が45%、RAS/チロシンキナーゼなどのシグナル伝達系分子が47%の遺伝子の変異が関与することを明らかにした。またiPS細胞樹立の基盤整備によりTAMからMDS/AMLへの移行の機序の解明に貢献できた。
エクソーム解析とターゲットリシーケンスについては、おおむね順調に進んだが、さらに多数例での新規に報告された遺伝子について検証を行い、臨床像との関係と機能解析を検討する。1)標的遺伝子の同定と遺伝子性状の解析解析した小児MDSとJMMLにおいてみい出された変異につき、次世代シーケンサーを用いて多数例でターゲットリシーケンスを行う。またheterodyplex mobility assay法、コロニーアッセイなどにより、腫瘍化との関連性のさらなる検証を行い、標的遺伝子の同定を試みる。並行して網羅的メチル化解析の結果より抽出した候補標的遺伝子に関しても同様の遺伝子の性状解析を行う。2)メチル化の網羅的解析メチル化の有無に関して網羅的に検討し、エピジェネティックな転写抑制機構の解明を試みる。検出されたメチル化領域に関しては、発現解析およびbisulfate sequencingによりvalidationを行い、さらに有用なものに関しては5-aza-deoxythidineによるin vitro assayも行う。
平成26年度に小児MDS40例とJMML 40例の検討を行い、CALR遺伝子の変異はETの1例でみい出したが、CSF3R遺伝子の変異はみられなかった。AMLでは534例中10例(1.87%)に変異がみられた。ダウン症候群では既知の遺伝子に加え新規12遺伝子につきサンガーシーケンスにより検証を行い、新規遺伝子を同定し、その遺伝子を多数例でHiSeq2000とMiSeqを用いてターゲットリシーケンスを行っているところである。当初の計画よりMDSとJMMLの正常検体が入手できたのが少なかったこともあり、研究費120万円を次年度の症例を検討するために先送りした。これらを研究予定なので、PCR、シーケンスの試薬を中心に平成26年度の先送りした研究費を合わせて次年度の研究費を使用する予定である。エクソーム解析のキットも購入する予定である。
平成26年度に小児MDS 40例とJMML40例の検討を行い、CALR遺伝子の変異はETの1例でみい出したがCSF3R遺伝子の変異はみられなかった。AMLではCSF3R遺伝子の変異は534例中10例(1.87%)に変異がみられた。CALR遺伝子変異についてさらに詳細に検討する予定である。ダウン症候群では新規12遺伝子につきサンガーシーケンスにより検証を行い、さらに新規遺伝子を同定し、多数例でターゲットリシーケンスを行っている。当初の計画よりMDSとJMMLの正常検体が入手できなかったため、研究費の一部を次年度の使用のために先送りした。次年度はさらに正常細胞を入手し検討を行う。また小児MDSとJMMLで標的遺伝子のうち5遺伝子につきターゲットリシーケンスを行い、小児MDSとJMMLの原因遺伝子をみいだし、分子標的療法の分子遺伝学的基盤を構築する。
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