本研究は、アトピー性皮膚炎(AD)のゲノムワイド関連解析により同定された新規8ゲノム領域に関して、疾患関連遺伝子の絞込みと、その他のアレルギー疾患の罹患性に関する検討を目的としている。 1. 食物アレルギーの検体集取: より信頼性の高い遺伝的解析を行うため、検体の収集を継続した。末梢血検体よりゲノムDNAを抽出し、濃度調整、プレート化を行った。その結果、食物アレルギー検体は、第一集団として約680検体(約80検体増加)、第二集団として約370検体(約70検体増加)となった。 2. 新規8ゲノム領域からの関連遺伝子の絞込み: 初年度に、GLB1遺伝子内のゲノム領域におけるCCR4遺伝子の発現に対する影響の検討を行い、このゲノム領域がCCR4遺伝子の発現を調節している領域(eQTL)であること、また、このゲノム領域のヒストンのアセチル化(H3K27ac)、メチル化(H3K4me1)が周辺のゲノム領域より相対的に高値であることを示した。2年度目は、GLB1遺伝子内のゲノム領域とCCR4遺伝子のプロモーター領域とが核内において三次元的に近接するかどうかを検討し(3C assay: Chromosome Conformation Capture assay)、実際に近接している可能性を示唆する結果を得た。 3. 新規8ゲノム領域のAD以外のアレルギー疾患における関連解析: 新規8ゲノム領域に関して、スギ花粉症サンプル(約900検体)とコントロール群(約900検体)を用いて関連解析を行った。各遺伝様式ごとに関連解析をおこなったが、スギ花粉症の易罹患性に関連するゲノム領域は認められなかった。
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