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2013 年度 実施状況報告書

幹細胞制御因子CD133を標的とした難治性神経芽腫の新規治療法開発の基盤研究

研究課題

研究課題/領域番号 25461614
研究種目

基盤研究(C)

研究機関千葉県がんセンター(研究所)

研究代表者

竹信 尚典  千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ, 研究員 (60392247)

研究分担者 上條 岳彦  千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ, 部長 (90262708)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード幹細胞 / 発がん / 分化
研究概要

神経および脳腫瘍の幹細胞マーカーであるCD133は、神経芽腫の幹細胞が濃縮される浮遊細胞塊(以下スフェア)培養において発現が誘導された。また、CD133を発現した神経芽腫細胞では、細胞の分化に関わる受容体分子RETの発現が、p38MAPKおよびAKTのシグナル活性化を介して抑えられることが明らかとなった。また、CD133を過剰発現するとスフェア内での細胞の生存率の上昇が見られ、CD133はがん幹細胞の維持重要な役割を持つことが示唆された。このことから、神経芽腫幹細胞においてCD133が発現誘導されており、その結果分化が抑制され、CD133は神経芽腫の悪性化に寄与していることが示唆された。この結果はOncogene誌に掲載された(Oncogene, 2011, (30) 97-105)。また、神経芽腫スフェアではCD133の5つのプロモーターのうち、プロモーターP1が特異的に使用され、転写が誘導されていることが明らかとなった。そのプロモーターP1に結合する転写因子を網羅的に解析した結果、転写因子CDX1を同定した。CDX1の高発現は神経芽腫細胞のin vitro/vivoでの増殖を促進し、スフェア形成を誘導した。また、CDX1はCD133以外に複数の幹細胞関連遺伝子のプロモーターに結合し、転写に関わっていることが明らかとなった。
そこで、CD133およびCDX1を組織特異的に発現するマウスを作出するため、トランスジェニック(Tg)を作成した。TgベクターはマウスES細胞へ導入され、マウスを作出した。今後組織特異的Cre遺伝子を持つマウスとの掛け合わせおよび、神経芽腫モデルマウスを用いて、発がんおよび腫瘍形成の促進について解析する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

神経芽腫スフェア特異的なCD133の制御分子としてCDX1を見出し、CDX1が神経芽腫細胞のスフェア形成能を上昇させることを明らかにした。また、CDX1がCD133だけでなく、OCT4を始めとした複数の幹細胞関連遺伝子の発現を促進し、そのことによって神経芽腫のがん幹細胞性に関わっていることを示した。in vitroでの実験データを元に現在論文を作成中である。さらに、CD133またはCDX1をマウスゲノムのRosa26領域に挿入し、CAG-Creマウスと交配させることで組織特異的に発現するベクターを、かずさDNA研究所と共同で開発することに成功した。そのベクターをマウス胚へ導入し、理化学研究所において組織特異的にCD133またyはCDX1遺伝子のノックインが可能なTgマウスを作出した。

今後の研究の推進方策

CDX1の高発現によって誘導される、幹細胞関連遺伝子およびがん関連遺伝子を、網羅的発現解析によって明らかにする。このことで神経芽腫スフェアにおいてがんの悪性化に関わる遺伝子を同定することで、新たな治療の開発のシーズとなりうる。この内容を元に論文を作成し、投稿を行う。
CD133またはCDX1をRosa26領域に持つTgマウスについては、全身または神経特異的なCAG-Creを持つマウスと交配して、CD133またはCDX1の高発現と発がんについて、in vivoイメージャーを用いてin vivoにおいて経時的に観察するとともに、がんが発生したした神経細胞を用いてin vitroの解析を行う。さらに、神経芽腫を自然発症するMYCNトランスジェニックマウスと交配して神経芽腫の発生率、転移率の上昇と死亡率について解析を行う。

次年度の研究費の使用計画

CD133およびCDX1を組織特異的に発現するノックインマウスと掛け合わせるための、TH-MYCN-Tgマウスが十分な数維持できておらず、腫瘍およびその転移を生体内でモニターするための試薬を購入する必要がなかったため、当初の計画よりも使用される予算が少なくなった。
TH-MYCN-Tgマウスは既に千葉県がんセンターで保有しているため、複数のマウスを飼育して腫瘍の形成状況を観察する。また今回作成したCD133およびCDX1を組織特異的に発現するノックインマウスについても、しばらく観察を続けた後、トランスジェニック動物の匹数、観察期間および体重等に応じて試薬を購入する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2014 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] Novel 1p tumour suppressor Dnmt1-associated protein 1 regulates MYCN/ataxia telangiectasia mutated/p53 pathway.2014

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi Y, Takenobu H, Ohira M, Nakazawa A, Yoshida S, Akita N, Shimozato O, Iwama A, Nakagawara A, Kamijo T.
    • 雑誌名

      Eur J Cancer.

      巻: 50 ページ: 1555-1565

    • DOI

      10.1016/j.ejca.2014.01.023.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Functional p53 inactivation in neuroblastoma: novel 1p tumor suppressor DMAP1 regulates MYCN/ATM/p53 pathway

    • 著者名/発表者名
      山口 陽子, 竹信 尚典, 下里 修, 大平 美紀, 中川原 章, 上條 岳彦
    • 学会等名
      第6回 国際p63/p73ワークショップ
    • 発表場所
      木更津
  • [学会発表] Tumor sphere specific transcription factor regulates stem cell-related genes in neuroblastoma

    • 著者名/発表者名
      竹信 尚典, 下里 修, 古関 明彦, 上條 岳彦
    • 学会等名
      第1回 日本・台湾 神経芽腫シンポジウム
    • 発表場所
      横浜
  • [学会発表] MYCN/ATM/p53 経路を制御する新規がん抑制遺伝子 DMAP1

    • 著者名/発表者名
      山口 陽子, 竹信 尚典, 大平 美紀, 中澤 温子, 吉田 早哉香, 秋田 直洋, 下里 修, 岩間 厚志, 中川原 章, 上條 岳彦
    • 学会等名
      第72回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      横浜
  • [学会発表] 神経芽腫スフェア特異的な転写因子による幹細胞関連遺伝子の発現制御

    • 著者名/発表者名
      竹信 尚典, 下里 修, 秋田 直洋, 山口 陽子, 上原 悠, 藁谷 美雪, 池田 英里子, 中川原 章, 上條 岳彦
    • 学会等名
      第72回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      横浜
  • [学会発表] 膜結合型チロシン脱リン酸化酵素PTPRKによるチロシン脱リン酸化はがん幹細胞マーカーCD133の機構を負に制御する

    • 著者名/発表者名
      下里 修, 早田 浩明, 藁谷 美雪, 上原 悠, 竹信 尚典, 崔 星, 上條 岳彦
    • 学会等名
      第72回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      横浜
  • [学会発表] 大腸がん由来spheroid細胞はエピゲノム的制御によるABCB1遺伝子の発現上昇によって多剤耐性を獲得する

    • 著者名/発表者名
      上原 悠, 下里 修, 藁谷 美雪, 早田 浩明, 崔 星, 竹信 尚典、上條 岳彦
    • 学会等名
      第72回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      横浜
  • [学会発表] 神経芽腫スフェア形成に関わる転写因子の標的探索

    • 著者名/発表者名
      竹信 尚典, 下里 修, 秋田 直洋, 山口 陽子, 上原 悠, 藁谷 美雪, 池田 英里子, 中川原 章, 上條 岳彦
    • 学会等名
      第55回日本小児血液・がん学会学術集会
    • 発表場所
      福岡
  • [学会発表] ポリコーム PRC2 複合体 EZH2 の異常ヒストン修飾による神経芽腫発がん

    • 著者名/発表者名
      竹信 尚典, Amallia Nuggetsiana Setyawati, 秋田 直洋, 上條 岳彦
    • 学会等名
      第55回日本小児血液・がん学会学術集会
    • 発表場所
      福岡
  • [学会発表] 膜結合型チロシン脱リン酸化酵素PTPRKによるチロシン脱リン酸化はがん幹細胞マーカーCD133のAKT/b-catenin経路を介した発がん機構を負に制御する

    • 著者名/発表者名
      藁谷 美雪, 下里 修, 早田 浩明, 上原 悠、竹信 尚典, 崔 星, 上條 岳彦
    • 学会等名
      第36回分子生物学会
    • 発表場所
      神戸

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公開日: 2015-05-28  

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