研究課題/領域番号 |
25461615
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
田中 完 弘前大学, 教育学部, 教授 (50271820)
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研究分担者 |
吉田 秀見 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40201008)
今泉 忠淳 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90232602)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | CXCL1 / TLR3 / human mesangial cells / pseudoviral immunity / lupus nephritis |
研究実績の概要 |
【背景】慢性糸球体腎炎・慢性腎臓病 (CKD)では,ウイルス感染や自己抗原による "疑似ウイルス感染" を認識した Toll-like receptors (TLRs)を起点とする自然免疫系の過剰反応が、その炎症病変形成に大きく関わっている可能性がある。われわれは,ウイルス dsRNAの進行合成物 polyinosinic-polycytidylic acid (poly IC)により培養ヒトメサンギウム細胞 (MCs)上に発現する TLR3を起点とする炎症経路群の解明を進めてきた。今回,好中球遊走因子である CXCL1/GROαの発現に注目した検討を行った。 【方法】MCsを poly ICで処理し,TLR3/IFN-β,TLR3/IRF3,TLR3/NF-κBと CXCL1の発現を RNA干渉法による knockdownとともに RT-PCRと ELISAで検討した。また,ループス腎炎と IgA腎症の腎生検標本で CXCL1の免疫染色を行い,臨床検体での発現を検討した。 【結果】poly ICはMCs上に濃度・時間依存性にCXCL1の発現を誘導した. poly ICによる CXCL1の発現は,TLR3,IFN-β,NF-κB,IRF3のknockdownにより有意に抑制されたことから,TLR3を起点としたそれぞれの経路 (TLR3/IFN-β, TLR3/NF-κB, TLR3/IRF3)が同程度CXCL1の発現に関与していることが示唆された.一方, TNF-αで誘導されるCXCL1はIFN-βの knockdownで抑制されなかった.さらに,poly ICによるCXCL1の発現には細胞質内受容体である RIG-I/MDA5の関与は否定的で TLR3依存性であることが確認された.臨床検体では,増殖性ループス腎炎検体のメサンギウム領域にCXCL1が陽性であったが,IgA腎症での染色性には乏しかった. 【まとめ】MCs上に TLR3を介して CXCL1が発現することが示された.これまでのわれわれの報告と併せて,他の免疫複合体性腎炎症候群に比してループス腎炎ではこの経路の強い活性が病態に関与していることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養ヒトメサンギウム細胞 (MCs)における Toll-like receptor (TLR) 3を起点とする炎症経路群の解明を継続することで,各種の炎症性ケモカインの発現の分子レベルでのシグナリングを示す新たな成果が示されている。これらのシグナリングは臨床検体からも免疫染色により確認されることから,CKDの病態に大きく関わっていることが示唆される。これらの炎症経路群を制御するための治療戦略として,候補となるいくつかの薬剤の検討も進めており,CKDの新たな治療戦略の構築への足がかりを示しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの MCsを用いた実験系で明らかとなった多様な炎症経路群相互の連関を検討する他に,例えば培養ヒト糸球体内皮細胞での検討も加えて,より広い糸球体構成細胞間での相互作用も含めた検討を行う必要がある。さらに,TLR3を起点とする炎症経路群の制御におけるステロイド薬、免疫抑制薬,免疫調整薬などの役割の詳細を分子レベルで検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた消耗品,薬品類などが安価となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に追加購入する培養細胞と関連器具類に使用予定。
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