研究課題
本研究は膜性増殖性腎炎(MPGN)におけるメサンギウム細胞の形態や運動・増殖能を制御する分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。H26年度は、H25年度に行った検討によりメサンギウム細胞の形態制御に関わることが判明した新規分子について解析した。1.メサンギウム細胞の運動・増殖制御を担う候補分子として種々の細胞骨格タンパクや接着蛋白の培養メサンギウム細胞における局在を検証した。そのうちある細胞間接着蛋白質が複合体を形成して糸球体および培養メサンギウム細胞において特徴的な発現を示す事をPLA(Proximity Ligation Assay)や免疫沈降により見いだした。2.補体や各種刺激によるメサンギウム細胞の変化を解析するためにMPGNやIgA腎症などの患者腎組織切片を用いて細胞骨格タンパクや接着蛋白の発現を解析した。1で解析した細胞接着分子が特異的にメサンギウム細胞間において発現が低下することを見いだし、メサンギウム細胞障害の下流での細胞の機能変化に関与していることが示唆された。3. メサンギウム細胞の細胞増殖や細胞運動性にこれらの分子が関与するかどうかについて検討を行った。これらの因子をノックダウンすることにより細胞運動性、特にPDGF刺激による運動性が減弱することが明らかになった。そのメカニズムを解析したところメサンギウム細胞の平面内細胞極性を示すゴルジ体の配向が変化していたことから、メサンギウム細胞の極性の変化がメサンギウム細胞の機能と関連することを見いだした。
2: おおむね順調に進展している
25年度と26年度の検討によりメサンギウム細胞の形態変化および運動性の変化を起こす因子を複数見いだし、メサンギウム増殖性腎炎患者での発現変化とその変化のメカニズムを同定し、研究は順調に進行している。
メサンギウム細胞傷害によるメサンギウム細胞の変化のメカニズムの更なる詳細を継続して検討する。またメサンギウム細胞の機能重要な影響を及ぼすことを同定した因子群が生体内でメサンギウム細胞にどのような作用を持つのか、それらの発現変化が直接メサンギウム増殖性腎炎を起こすかどうかについて検討を行う。すなわちこれらの因子の発現を遺伝子導入およびノックダウンにより変化させ、腎炎のモデルが作成可能かどうかについて検討する。
学会発表を翌年に以降し、本年度は旅費を使用しなかったため
海外学会に参加予定
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件)
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