研究実績の概要 |
(in vitro)日本医科大学(島田教授)より提供して頂いたアデノ随伴ウイルスベクターtype9をもとに、α-MHCをpromoterとし、機能獲得変異型MT-NPRB、野生型WT-NPRBおよびGFPを、それぞれ心筋細胞特異的に発現させるウイルスベクター(以下AAV-9ベクター)を作製した。このAAV-9ベクターを用いて、新生児ラットより分離した心筋細胞に対しMT-NPRBを発現させたところ、前回報告したアデノウイルスベクターを用いた際に認めた心筋細胞肥大抑制効果と同様の効果を確認した(Cell size:GFP 2.2±0.4, WT 2.1±0.4, MT 1.2±0.3 (±SD, -fold vs control))。また、MT-NPRBを発現させた心筋細胞において、cGMP濃度の上昇(GFP 0.5±0.1, WT 12.5±0.3, MT 611.5±75.2 (±SD, pmol/ml, without CNP) )、PKG活性の上昇(WT 1.2±0.1, MT 1.9±0.1 (±SD, -fold vs GFP))を認めた。 (in vivo)次に、皮下埋込み型浸透圧ポンプを用いてIsoproterenol 30mg/kg/dayを1週間持続注入して作製した左室肥大モデルマウスに対し、AAV-9ベクターを尾静脈から経静脈的に投与しGFPを発現させたところ、心臓以外の臓器ではGFPの発現を認めず、心臓に特異的なGFPの発現が確認された。そこで、心臓特異的にGFP、WT、MTをそれぞれ発現させたところ、心重量/体重比に有意差はなく、MTを発現させたマウスでは、Isoproterenolによる心筋細胞肥大効果が抑制された(Cross sectional cell surface area; Sham 99±7, GFP 96±9, WT 91±10, MT 67±10 (±SD, μm2))。さらに、MTを発現させたマウスにおいて心機能の改善を認めた(Fraction Shortning(±SD, %); Sham 28±2, GFP 26±3, WT 26±2, MT 34±5)。 以上から、機能獲得変異型NPR-Bの心筋細胞への強制発現は、心不全の新たな治療戦略になり得ると考えられる。しかし、強制発現による副作用等、その臨床応用に際しては更なる検討が必要である。
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