研究実績の概要 |
小児期の肺高血圧症には、特発性、遺伝性および先天性心疾患や呼吸器疾患を原因とする症例などが挙げられる。肺高血圧症の病態進行とともに病理学的には血管内膜の肥厚線維化、中膜の平滑筋層肥大や叢状病変と呼ばれる複雑な像を呈する病変が認められ、心不全の増悪を引き起こし、患児の予後に大きく影響を及ぼすこととなる。 我々は本研究において肺動脈性肺高血圧症の血管病変における血管内皮細胞由来過分極因子(Endothelium-derived hyperpolarizing factor, EDHF)の作用状態、およびEDHFの肺高血圧病変進行における役割解明と肺高血圧症への治療応用の開発に関して研究することを目的として、主に血管内皮細胞および血管平滑筋細胞のカリウムチャネル制御の点から検討した。コントロール(正常肺動脈圧)ラットおよび肺高血圧ラットにおける肺動脈のEDHF産生・遊離およびEDHFに対する血管平滑筋細胞の反応の検討を研究した。モノクロタリン投与または低酸素暴露によって肺高血圧症を呈したラットの肺血管組織を摘出し、血管張力測定を施行して内皮依存性弛緩およびEDHF依存性弛緩について観察した。 EDHF依存性弛緩の検討ではプロスタグランジンや一酸化窒素の影響を取り除くためにインドメタシン、NO産生阻害剤、グアニル酸サイクラーゼ阻害剤などを適宜使用して施行した。肺高血圧ラットにおいては内皮依存性の血管弛緩反応低下が認められた。また、肺血管のEDHFに対する反応を検討したところ反応性の低下が認められた。肺高血圧ラット群においては、血管内皮細胞のKCa3.1, KCa2.3 channelの発現低下が確認された。 血管平滑筋細胞においては、KCa1.1 channelの発現および電流低下が認められた。
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