研究実績の概要 |
ネフローゼ症候群に代表されるタンパク尿をきたす疾患において、糸球体上皮細胞(ポドサイト)が傷害され糸球体濾過障壁の破綻が起こることが知られている。また、その際にポドサイトにおいてCD80蛋白の発現が亢進する。我々は、ポドサイト細胞株を用いて、ポドサイト傷害機序におけるCD80/CD28シグナル伝達の影響を検討している。ポドサイト細胞株においても、種々の刺激(polyI;C, Puromycin, 活性酸素)によってCD80 mRNAの発現亢進をリアルタイムPCRによって確認した。また、免疫沈降法によってCD80とCD28が結合していることを確認した。次に、ポドサイト傷害におけるアポトーシスの関与を明らかにするために、PAN刺激を用いて検討を行った。PAN投与によって、細胞死が増加し、フローサイトメトリーによる検討でアポトーシスが関与していることを確認した。アポトーシスに関連する主要な分子のmRNA発現をリアルタイムPCRで検討したが、有意に増加しているものを同定することはできなかった。そこで、酸化ストレスの影響を活性酸素の蛍光染色、フローサイトメトリーによって確認したところ、細胞内活性酸素の増加が認められた。また、LC3のウエスタンブロットでLC3-Ⅱの増加を認め、ポドサイト傷害時にかアートファジーが防御的に働いてる可能性が考えられた。これらの機序におけるCD80/CD28シグナル伝達の影響を見るために、PAN刺激によるCD28発現の変化をリアルタイムPCR、フローサイトメトリーによって検討を行ったが、CD28のmRNA及びタンパクに有意な変化は確認できなかった。 ポドサイト傷害時には、酸化ストレスやオートファジーが関与していることが確認できたが、CD80/CD28シグナル伝達との関連を明らかにすることができなかった。今回の検討では、CD80タンパク発現増加がポドサイト傷害にどのように関わっているか、明らかにすることができなかった。
|