研究実績の概要 |
先天性心疾患患児(CHD児)では、高度の心不全やチアノーゼによる腎虚血に加え、心疾患手術後の急性腎障害(AKI)が高頻度にみられ、その後の慢性腎臓病(CKD)の進展に影響していることが予想される。今回、CHD児において心臓カテーテル検査(心カテ)前後の腎機能について検討した。心臓カテーテル検査をうけた6歳以上の患児38名の検討では、カテ前後で血清CrやシスタチンCなどによるeGFRの変動を認めた症例はなかったが、一部の症例でカテ前から軽度のeGFR低下やアルブミン尿、尿中β2-ミクログロブリン(BMG)、NAGの増加を認め、また多くの症例でカテ後に一過性の尿中L-FABP(L型脂肪酸結合蛋白)の上昇や、一部に尿中BMG、アルブミンの上昇などを認めた。またこれらのカテ後の尿中L-FABPや尿中BMGの上昇は、心疾患術後にAKIを合併した症例でより顕著に認められた。(カテ翌日尿中L-FABP:AKI既往群(n=11) vs 非既往群(n=23), 34.5±8.7 vs 16.5±4.1, mean±SE, P<0.05)(カテ翌日尿中BMG:AKI既往群(n=11) vs 非既往群(n=23), 661±225 vs 202±44, mean±SE, P<0.01)これらの結果より、CHD児において術後のAKIに起因する尿細管機能の予備力低下が示唆された。CHD児では、AKIの既往はCKDへの進展に対するリスク因子となると考えられる。
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