研究実績の概要 |
私たちはこれまでに、カンジダ細胞壁抽出物(CAWS)の投与で誘発されるマウス川崎病様血管炎の進展、重症化にmannose binding lectin (MBL)を介する補体経路(レクチン経路)活性化が関与することを見いだした。MBLによるレクチン経路活性化はMBL-associated serine proteinases (MASPs)によるC2およびC4の限定分解によって開始する。ゆえにMASPは、本モデルでみられるような補体関連血管炎の治療標的となることが期待出来ると考え、前年度に引き続きMASPsをin vitroで阻害する事が知られている阻害ペプチドおよびC1INHによる阻害実験を継続した。配列の異なる2種のペプチドを血管炎モデルマウス腹腔内に投与したが、十分な炎症抑制効果を見るには至らなかった。同ペプチドがMASPsを阻害することはin vitroでは報告されているが、in vivoでの半減期および阻害効果はこれまで報告がないため、今後、これらのペプチドのin vitroでの有効性を最大限に発揮しうるような投与量、投与回数,投与経路などの最適条件の確立が必要と考えられる。一方C1INHは例数は少ないがマウス血管炎にたいして炎症抑制効果を認めた。C1INHは他の補体経路にも作用しうるので今後、より詳細な検討が必要と考えている。 これとは別に、私たちは、これまでにin vitro 系でのMBLとHistoneとの相互作用を報告している。活性化した好中球はしばしば細胞外へクロマチンを放出する(Neutrophile extracellular traps :NETs)のでMBLとNetsの関係を培養系で調べた。その結果、予備的データであるが、MBLはNETの一部に結合することがわかった。NETsの血管内皮傷害へのMBLを介した補体系の関与について興味が持たれる。
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