研究課題/領域番号 |
25461631
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
前田 潤 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (00255506)
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研究分担者 |
土橋 隆俊 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (10286528)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心臓流出路発生 / Tbx1遺伝子 / 葉酸 / 環境因子 |
研究実績の概要 |
①心臓流出路発生に必須の転写因子Tbx1の発現を低下させた遺伝子操作マウスTbx1neo/neo胎仔の心大血管表現型解析、②Tbx1neo/neo妊娠マウスに通常の10倍の葉酸を含有する葉酸過剰餌、普通餌を各々投与し、胎仔の心大血管表現型解析を行った。 ①胎生18.5日のTbx1neo/neo胎仔すべてにおいて、大動脈と肺動脈が共通幹を形成する総動脈幹症を認めた。いずれも、主肺動脈がなく、左右肺動脈が総動脈幹より独立して分岐するVan Praagh分類A2型総動脈幹症であった。胎生13.5日のTbx1neo/neo胎仔では、流出路中隔の形成が高度に障害されており、流出路遠位の動脈幹内に大動脈中隔が形成されず、大動脈と肺動脈が分割されない総動脈幹症の表現型を呈することが示唆された。②葉酸過剰餌を投与した母マウスから採取した胎生18.5日のTbx1neo/neo胎仔は、普通餌を投与した母マウスから採取したTbx1neo/neo胎仔と同様に総動脈幹症を認めたが、すべてがA2型の形態から、総動脈幹から主肺動脈が分岐し、その後左右肺動脈が分枝するA1型に変化していた。次に、葉酸過剰餌と普通餌を投与した母マウスから、胎生10.5日のTbx1neo/neo胎仔を採取し、心臓流出路を観察した。心臓流出路内には、胎仔背部の神経堤から間葉系細胞(神経堤細胞)が遊走し、流出路中隔及び遠位の動脈幹中隔を形成することが知られている。葉酸過剰餌を与えた母マウスのTbx1neo/neo胎仔では、普通餌を投与した母マウスのTbx1neo/neo胎仔に比して、同部位の神経堤細胞数が増加していた。 以上の観察から、葉酸は、心臓流出路へ遊走する神経堤細胞数を増加させることにより、Tbx1発現低下による動脈幹中隔形成不全を一部代償し、大動脈と肺動脈の分割を招来し、その結果心大血管表現型を軽症化させたことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解析を行うTbx1neo/neo胎仔を得るために、Tbx1neo/+ヘテロ接合雄マウスと雌マウスを交配させる必要があるが、交配による妊娠の確率が低いこと、さらに解析対象となるTbx1neo/neoホモ接合胎仔は、妊娠して得られた全胎仔の1/4であることから、Tbx1neo/neo胎仔が想定していたように採取できず、本研究の進行を妨げる要因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
心臓流出路が形成される直前の胎生9.5日のTbx1neo/neo胎仔よりRNAを採取し、葉酸過剰餌と普通餌を投与により、Tbx1をはじめとする心臓流出路形成に関与する遺伝子発現を、in situ hybridization法や定量的PCR法で比較する。これにより、葉酸、Tbx1の心臓流出路、大動脈弓発生における分子メカニズム、すなわち遺伝子と環境因子の相互作用の解明を試みる。 また、本研究を遅延させているTbx1neo/neo胎仔については、採取数を増加させるために、Tbx1neo/+ヘテロ接合雌マウスを可及的に繁殖、安定継代させ、Tbx1neo/n+ヘテロ接合雄マウスと次々に交配させる方針である。
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