研究実績の概要 |
我々はFoxc2ノックアウトマウスにおける鰓弓動脈リモデリングと肺分化成熟過程を解析、心大血管形態形成と肺発生での本遺伝子の関連性について検討している。本年度も引き続き心肺前駆細胞および肺上皮前駆細胞の分化を念頭に、血管系においては胎齢(E)10.5-11.5日Foxc2ミュータント胚仔の第4-6鰓弓動脈血管内皮の走行形態、肺の分化成熟過程ではE10.5-18.5マウスの肺芽から肺に至るそれぞれのステージでの肺発生に関連する遺伝子の発現動態を中心に解析した。 血管内皮マーカー抗CD31抗体による鰓弓動脈のパターン解析では、E10.5の Foxc2-/-胚仔で第4鰓弓動脈内皮管状構造の狭窄、背側大動脈壁の凹凸、鰓弓の間葉系組織にCD31+細胞の網状構造が認められた。肺に発現する遺伝子のreal time PCRでは、Fgf 7/9/10 および Tgfb1/2/3において、Foxc2+/+ (WT) とFoxc2-/-で発現量の推移に統計学的有意差が認められなかったが、Wnt シグナル系ではWnt2, Ctnnb2では有意差がないが、E11.5胚仔でLef1発現量に有意差を認めた。このため、抗Lef1抗体で免疫染色を行ったところ、E11.5のWTでは肺胞上皮に接する間葉組織がLef1陽性になったが、Foxc2-/-では発現が低下していた。 本研究は肺の発生過程の発現遺伝子にFoxc2が関与する初めての報告となるが、Foxc2+間葉系細胞の血管・リンパ管系および肺組織への分布様式の詳細は未だ不明である。このため、Foxc2-CreERT2マウスの分与を受け、Foxc2 fate mappingと多重免疫染色による血管の構築、Foxc2+間葉系細胞の肺芽への影響の詳細について今後の研究を進める予定である。
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