研究課題/領域番号 |
25461637
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
伊藤 秀一 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20336572)
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研究分担者 |
阿部 淳 独立行政法人国立成育医療研究センター, 免疫アレルギー研究部, 室長 (40281688)
賀藤 均 独立行政法人国立成育医療研究センター, 機関病態系内科部, 院長 (70214393)
松岡 健太郎 独立行政法人国立成育医療研究センター, 病理診断部, 医長 (90286443)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | チアノーゼ性腎症 / 先天性心疾患 / HIF-1α / VEGF |
研究実績の概要 |
チアノーゼ性腎症はチアノーゼ性心疾患に伴い蛋白尿や腎機能低下を呈する疾患である。その原因は低酸素に伴った赤血球増多症と過粘調度症候群による糸球体内圧の上昇、さらに右左短絡による巨核球の腎皮質の浸潤と巨核球由来の血小板由来成長因子(PDGF)や形質転換成長因子(TGF-β)によるメサンギウム細胞や基質の増殖によるとされるが、詳細な機序はいまだに不明である。本研究は、その発症機序や病態生理を研究する。初年度の研究では免疫染色では患者8名全てにHIF-1αとVEGFを糸球体内皮細胞に認めた。正常コントロール3名では認めなかった。一方、炎症に関与する転写因子のNF-κB、アポトーシスのマーカーであるTUNELは染色されなかった。 本年度は、チアノーゼ性腎症の進展機序が低酸素下の過剰な酸化ストレスによる可能性を考慮し、酸化ストレスの代表的産物としての4-HNE[4-hydroxy-2-nonenal]、8-OHdG(8-Hydroxydeoxyguanosine)の免疫組織染色を行った。しかしながら、両者とも患者および正常コントロールにおいても染色されなかった。すなわち、少なくとも強度の酸化ストレスによる組織障害は見いだせなかった。さらに前年度の研究において、チアノーゼ性腎症患者の腎組織内でVEGFの発現を認めたため、患者(n=5) 血漿中のVEGFの測定を試みた。しかしながら、正常コントロール(n=9)との間に有意差を認めなかった(466±385 pg/mL vs 247±65 pg/mL, P=0.09)。このことより、患者におけるVEGFは糸球体内に限局して発現が増加している可能性が示された。 また、VEGFは蛋白尿が多い患者の方が強く発現している傾向が判明した。しかしながら、VEGFの腎臓内における発現が、低酸素に対して保護的に働いているのか、障害的に働いているかの検討が今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4-HNE[4-hydroxy-2-nonenal]、8-OHdG(8-Hydroxydeoxyguanosine)の免疫染色は条件設定に時間がかかったが、その検討を適切に実施しえた。また患者血清のVEGFの測定を行ったが、より多数例での検討が必要と考えられた。しかしながら、チアノーゼが持続する先天性心疾患の患者の予後は不良であり、検討対象となっている患者の2名が根治術後の合併症と肺動脈瘤の破裂により死亡している。通院中の生存患者が少なく、単施設では検体を得ることが難しいことが問題である。
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今後の研究の推進方策 |
VEGFには種々の分画があり、疾患により分画の増加や減少が異なるため、VEFGの分画(VEGF-A,C,D)による詳細な検討が必要であると考えられた。来年度は本症患者の血漿・血清中の炎症性サイトカインの測定を実施し、本症の発症機序に低酸素が誘導する炎症の関与について検討する。さらに糸球体内の毛細血管係蹄の増加の原因について、VEGF分画に加えPLGF, HGFなどの成長因子の測定を検討する。さらに患者の血球を用いたマイクロアレーによる低酸素化の分子の発現変化についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が平成26年11月に所属が変更になり、研究計画を見直する必要があり VEFG等の分画検討が出来なくなり、繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
①患者血清中のVEFG,PLGF,HGFの測定、②患者血清中の炎症性サイトカインの測定 以上を平成26年度繰越金と平成27年度助成金を用いて行う。
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