研究課題
初年度の研究で、チアノーゼ性心疾患における重篤な合併症であるチアノーゼ性腎症患者(n=8)の腎臓糸球体内皮細胞におけるHIF-1αとVEGFの発現が示された。しかし、腎組織内でVEGFの発現を認めた患者(n=5)の 血漿中VEGFは、正常コントロール(n=9)と有意差を認めなかった。しかし、VEGFには種々の分画があり、分画の検討が必要と考えられた。またVEGF以外にの炎症に関与する物質の存在が推定された。今年度は患者の血漿中の炎症性サイトカイン、VEGF分画(VEGF-a,VEGF-c)について、ルミネックス法を用い探索した。VEGF-aは血管内皮細胞の遊走・増殖に関与し、分画のなかでも主要な位置を占める。一方、VEGF-cは血管の増殖以外に、血管透過性亢進、さらにリンパ管の新生やがん転移にも関与する。本研究では、本症患者4名とコントロール9名において、血漿中のG-CSF、IFN-g、IL-1b、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-17、MCP-1、TNF-a、VEGF-a、VEGF-cを測定した。その結果、患者においてTNF-α(患者vsコントロール;6.6±2.8 pg/mL vs 15.6±5.8pg/mL,P=0.04)とVEGF-c (同;892.8 ± 192.9 pg/mL vs 56.4±27.4 pg/mL,P=0.003)の2つの分子が血漿中で有意に高値であった。本症の発症には、TNF-αやVEGF-c が関与している可能性が示唆された。しかし、本症は希少疾患であり検討した検体数が少ない事や腎症未発症のチアノーゼ性心疾患患者のこれらの物質との比較をしていないことがlimitationとなる。今後さらに検体数で検討し、患者糸球体内でのTNF-αやVEGF-cの免疫染色などを行う予定である。本研究から、チアノーゼ性心疾患患者の予後に影響するTNF-αやVEGF-cなどへのモノクローナル抗体の臨床応用は、根治療法のない本症の治療開発に発展する可能性があることが示された。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)
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