研究実績の概要 |
出生前の子宮内環境に応じた早産児への内分泌ホルモン補充療法を提案するため,本研究では成育限界期の早産児では子宮内環境の未熟性やストレスによって,子宮外環境に適応するための内分泌機能が胎生期にすでに損なわれているという仮説を検証する.そのため本研究期間内には,ヒツジ胎仔を成育限界期で出生させ,胎盤から切離されるストレス,子宮内炎症,および虚血性ストレスがコーチゾル・バゾプレシン分泌能とその循環動態に与える影響を明らかにする. 平成27年度には妊娠93日のヒツジ胎仔10頭(炎症群n=2, sham群n=7)を用いて慢性実験系を作成し,その内の7頭を妊娠100日から人工胎盤システムで3日間管理することができた.その結果,胎生期の炎症負荷前後もしくは人工胎盤装着中に,のべ29回のCRH負荷試験とのべ12回のAVP負荷試験を実施してデータを採取することができた. また,平成27年度にはこれまで採取して冷凍保存した血漿検体を用いて,AVP, ACTH, cortisol, cortisone, DHEA-S濃度の測定を試みた.免疫抗体法での測定は,AVPは特異抗体が販売中止,ACTHとcortisolはヒツジに特異的な3種類のkitを試したが安定した測定結果が得られず,cortisoneと DHEA-Sは測定感度以下であった.以上を踏まえて,これらは平成28年度にタンデムMSで測定することとした. したがって,本研究成果は血漿AVP, ACTH, cortisol, cortisone, DHEA-S濃度以外のデータを用いてまとめる予定である.
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