研究課題
本年度は、正期産児における低酸素虚血性脳症(HIE)に対する脳低温療法の代替薬物療法を開発することを目的とした。低酸素負荷の際には、脳内でノルエピネフリンが増加することが知られているが、ノルエピネフリンは血液脳関門を通過することができないために、臨床応用はされていない。Atomoxetine(ATM)は選択的なノルエピネフリンのreuptake阻害剤として知られ、ADHD児の治療薬として臨床応用されている。今回我々は、正期産児に相当するラットHIEモデルを作成し、低酸素虚血負荷に際してATMを投与することによりHIEの発症を防止できるかを検討した。その結果、ATMは組織学的にHIEの病態を改善し、その仕組みとしてCREBのリン酸化ならびにその標的タンパクであるBDNFの発現増加をもたらすことを明らかとした。また、この過程において、マイクログリアが深く関与していることがin vivo, in vitroの解析にて明らかとなった(論文投稿中)。
2: おおむね順調に進展している
低酸素虚血性脳症に対する脳低温療法の代替治療法の開発を目的として、脳内ノルエピネフリンの作用に注目し、ラット動物モデルを作成し、薬物投与により低酸素虚血性脳症が改善されること、さらにこの作用機序としてミクログリアが関与していることを確認できた。
最終年度は、早産児のPVLや正期産児のHIEにおけるオリゴデンドロサイトあるいはマイクログリアの新規薬物療法の確立に向けた基礎的研究を行う。すでに我々は、早産児のPVLや正期産児のHIEにおいて有用であると考えられるいくつかの候補薬物を発見しており、今後はこれら候補薬物の体内薬物動態と作用機序について検討する予定である。
当初予定していた動物実験が、予想していたよりも少ない動物数で完了し、現在投稿中の段階まで達したため
最終年度に、早産児のPVLや正期産児のHIEにおいて有用であると考えられるいくつかの候補薬物について、その体内薬物動態と作用機序について検討するために、当初予定していたよりも多くの動物実験を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (26件) (うち招待講演 2件)
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