新生児低酸素性虚血性脳症に対する低体温と水素吸入ガス併用療法の効果に関する研究

2014 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 25461647
• 研究機関: 香川大学
• 研究代表者: 日下 隆 香川大学, 医学部, 教授 (50274288)
• 研究分担者: 安田 真之 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (00380155) ; 久保井 徹 独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター(臨床研究部(成育)、臨, その他部局等, その他 (00437683) ; 小久保 謙一 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (20287965) ; 小谷野 耕佑 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (20437685) ; 岡田 仁 香川大学, 医学部, 准教授 (30253272) ; 三木 崇範 香川大学, 医学部, 教授 (30274294) ; 岩瀬 孝志 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (30284368) ; 上野 正樹 香川大学, 医学部, 教授 (30322267) ; 中村 信嗣 香川大学, 医学部, 助教 (30437686) ; 岡崎 薫 独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター(臨床研究部(成育)、臨, その他部局等, その他 (40648614) ; 小林 弘祐 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (70153632)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: 低酸素性虚血性脳症 / 新生児 / 動物モデル / 近赤外光 / 低体温療法 / エダラボン / 活性酸素 / 脳血液量

研究実績の概要

新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)の新生仔豚モデルを用いて、無治療群13頭、低体温療法群(HT)群9頭、低体温療法及び活性酸素消去薬のエダラボン（ラジカット）使用群8頭(HT+R)での群分けを行った。低酸素虚血負荷は脳波が低振幅脳波(LAEEG)になるまで吸入酸素濃度を低下させ、LAEEGを認めた後20分間は平均血圧が負荷前の60%以上、その後5-10分間は50％以上になるように吸入酸素濃度を調節し、蘇生を行った。また低酸素虚血負荷が同一となるように、近赤外光分光装置での脳血液量の低下を指標とした。HT群は蘇生直後から低体温（直腸温33.0-34.0度）を施行し、HT+R群は低体温に加えエダラボンを1日2回、3日間投与した。
結果、HT群では全例脳血液量は低下し、無治療群の蘇生後24時間での脳血液量増加(ΔCBV)とLAEEG持続時間は正の相関を示すが、HT群では負の相関を示した。両群での回帰直線を比較すると、LAEEG持続時間が長いほど蘇生後のΔCBV)が大きく無治療群は増加、HT群では低下）、このことはLAEEG持続時間が長い脳障害が重篤な症例ほど、脳循環の自動調節能が低く、HTによる脳循環への影響が出やすいと考えられた。
現在は、それぞれの中枢神経系や多臓器の組織学的な検索を進めている。また、水素吸入の準備を開始しており、HIEモデルでの有用性の検討を行う予定である。
特に平成26年度は地域での豚感染症が流行し、継続した研究が不可能であった。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

低酸素性虚血性脳症の新生仔豚モデルを用いて、、無治療群13頭、低体温療法群(HT)群9頭、低体温療法及び活性酸素消去薬のエダラボン（ラジカット）使用群8頭(HT+R)での負荷、蘇生後5日間の飼育が完了した。
現在は、中枢神経のみならず全身の組織評価を行っている。
しかし平成26年度は地域での豚感染症が流行し、思うように研究の継続が不可能であった。

今後の研究の推進方策

水素ガス吸入療法に関して、まずは安全性を考慮した研究を行う予定である。つまり24時間継続した水素ガス吸入での生理的な変動が惹起されないか経過観察を行う。この後に低酸素性虚血性脳症の新生仔豚モデルを用いての、治療効果を判定予定である。

次年度使用額が生じた理由

豚感染症の為、継続的に実験を行うことが出来なかった為、次年度へ繰り越す。

次年度使用額の使用計画

実験回数を増やす。

研究成果

• [雑誌論文] Evaluation of bilirubin displacement effect by acetaminophen in vitro. (2015)
  • 著者名/発表者名: Sugino M, Okada H, Kusaka T, Itoh S.
  • 雑誌名: Ann Clin Biochem 巻: 52 ページ: 476-480
  • DOI: 10.1177/0004563214567477
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Cerebral blood volume measurement using near-infrared time-resolved spectroscopy and histopathological evaluation after hypoxic-ischemic insult in newborn piglets. (2015)
  • 著者名/発表者名: Nakamura M, Jinnai W, Hamano S, Nakamura S, Koyano K, Chiba Y, Kanenishi K, Yasuda S, Ueno M, Miki T, Hata T, Kusaka T.
  • 雑誌名: International Journal of Developmental Neuroscience 巻: 42 ページ: 1-9
  • DOI: 10.1016/j.ijdevneu.2015.02.009
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Evaluation of cerebral circulation and oxygen metabolism in infants using near-infrared light. (2014)
  • 著者名/発表者名: Kusaka T, Isobe K, Yasuda S, Koyano K, Nakamura S, Nakamura M, Ueno M, Miki T, Itoh S.
  • 雑誌名: Brain Dev 巻: 36 ページ: 277-283
  • DOI: 10.1016/j.braindev.2013.05.011
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Relationship between early changes in cerebral blood volume and electrocortical activity after hypoxic-ischemic insult in newborn piglets. (2014)
  • 著者名/発表者名: Nakamura S, Kusaka T, Koyano K, Miki T, Ueno M, Jinnai W, Yasuda S, Nakamura M, Okada H, Isobe K, Itoh S.
  • 雑誌名: Brain Dev 巻: 36 ページ: 563-571
  • DOI: 10.1016/j.braindev.2013.08.005
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Clinically mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion caused by human parvovirus b19 infection: a case of two brothers with hereditary spherocytosis. (2014)
  • 著者名/発表者名: Suzuki H, Kusaka T, Okada H.
  • 雑誌名: Pediatr Neurol 巻: 51 ページ: 470-472
  • DOI: 10.1016/j.pediatrneurol.2014.05.021
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Changes in (99m)Tc-ECD SPECT and magnetic resonance angiography with sporadic hemiplegic migraine in a child. (2014)
  • 著者名/発表者名: Koyano K, Konishi Y, Okada H, Kusaka T, Itoh S.
  • 雑誌名: Clin Nucl Med 巻: 39 ページ: 483-484
  • DOI: 10.1097/RLU.0000000000000401
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Immunoreactivity of glucose transporter 5 is located in epithelial cells of the choroid plexus and ependymal cells. (2014)
  • 著者名/発表者名: Ueno M, Nishi N, Nakagawa T, Chiba Y, Tsukamoto I, Kusaka T, Miki T, Sakamoto H, Yamaguchi F, Tokuda M.
  • 雑誌名: Neuroscience 巻: 260 ページ: 149-157
  • DOI: 10.1016/j.neuroscience.2013.12.006
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Prolonged maternal separation disturbs the serotonergic system during early brain development. (2014)
  • 著者名/発表者名: Ohta K, Miki T, Warita K, Suzuki S, Kusaka T, Yakura T, Liu JQ, Tamai M, Takeuchi Y.
  • 雑誌名: Int J Dev Neurosci 巻: 33 ページ: 15-21
  • DOI: 10.1016/j.ijdevneu.2013.10.007
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Early postnatal repeated maternal deprivation causes a transient increase in OMpg and BDNF in rat cerebellum suggesting precocious myelination. (2014)
  • 著者名/発表者名: Miki T, Yokoyama T, Kusaka T, Suzuki S, Ohta K, Warita K, Wang ZY, Ueki M, Sumitani K, Bellinger FP, Tamai M, Liu JQ, Yakura T, Takeuchi Y.
  • 雑誌名: J Neurol Sci 巻: 336 ページ: 62-67
  • DOI: 10.1016/j.jns.2013.10.007
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Short-term ethanol exposure causes imbalanced neurotrophic factor allocation in the basal forebrain cholinergic system: a novel insight into understanding the initial processes of alcohol addiction. (2014)
  • 著者名/発表者名: Miki T, Kusaka T, Yokoyama T, Ohta K, Suzuki S, Warita K, Jamal M, Wang ZY, Ueki M, Liu JQ, Yakura T, Tamai M, Sumitani K, Hosomi N, Takeuchi Y.
  • 雑誌名: J Neural Transm 巻: 121 ページ: 201-210
  • DOI: 10.1007/s00702-013-1085-y
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 新生児低酸素性虚血性脳症 (2014)
  • 著者名/発表者名: 日下隆
  • 雑誌名: 日本小児科学会雑誌 巻: 118 ページ: 1565-1577
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] 近赤外光分析法 (2014)
  • 著者名/発表者名: 日下隆
  • 雑誌名: 周産期医学 巻: 44 ページ: 797-802
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [学会発表] 光を用いた新生児の脳循環と機能評価 (2015)
  • 著者名/発表者名: 日下隆
  • 学会等名: 第33回周産期学シンポジウム
  • 発表場所: 静岡県浜松市 アクトシティ浜松
  • 年月日: 2015-01-23 – 2015-01-24
• [学会発表] これからの日本新生児医療の未来への提言 (2014)
  • 著者名/発表者名: 日下隆
  • 学会等名: 新生児医療連絡会30周年記念講演会
  • 発表場所: 愛媛県松山市 ひめぎんホール
  • 年月日: 2014-11-11 – 2014-11-11
• [学会発表] 低酸素性虚血性脳症における脳循環と酸素代謝 (2014)
  • 著者名/発表者名: 日下隆
  • 学会等名: 第59回日本未熟児新生児学会・学術集会
  • 発表場所: 愛媛県松山市 ひめぎんホール
  • 年月日: 2014-11-10 – 2014-11-12
• [学会発表] 脳循環指標を用いた早産児貧血における輸血療法基準作成の検討 (2014)
  • 著者名/発表者名: 小谷野耕佑、有岡誠、喜多條真穂、新居広一郎、若林誉幸、近藤健夫、神内済、中村信嗣、安田真之、日下隆
  • 学会等名: 第59回日本未熟児新生児学会・学術集会
  • 発表場所: 愛媛県松山市 ひめぎんホール
  • 年月日: 2014-11-10 – 2014-11-12
• [学会発表] 新生仔豚を用いた低酸素虚血負荷後超早期における脳循環変化と病理学的脳障害の関係 (2014)
  • 著者名/発表者名: 濱野聡史、中村信、神内済、中村信嗣、小谷野耕佑、安田真之、岩瀬孝志、岡田仁、日下隆
  • 学会等名: 第50日本周産期・新生児医学会学術集会
  • 発表場所: 千葉県浦安市 シュラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル
  • 年月日: 2014-07-13 – 2014-07-15