研究課題/領域番号 |
25461649
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岩井 正憲 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (80467993)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 内在性神経幹細胞 / 新生児低酸素性虚血性脳症 / bFGF / EGF / 虚血障害部位内投与 / 神経再生医療 |
研究実績の概要 |
本研究は、仔ラットを用いた新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)モデルを用いて、basic fibrblast growth factor (bFGF)およびepidermal growth factor (EGF)を虚血性脳障害部位に投与することが、subventricular zone (SVZ)および虚血性脳障害部位の内在性神経幹細胞を賦活化させ、神経組織保護、神経組織修復にどのような影響を示すかを検討し、同方法のHIE治療に対する応用の可能性を追求することを本研究の目的としている。 本年度は昨年度作成した脳組織での解析を行った。 本モデルにおいて、低酸素虚血侵襲後3日および4日にbFGF(10µg/㎏)+EGF(10µg/㎏)を虚血性脳障害部位に投与することで、Naive control、Vehicle control, bFGF+EGG groupでの虚血側半球SVZ背側でのBrdU陽性細胞数は、生後14日(低酸素虚血侵襲後7日)でそれぞれ449±53、558±81、774±108、同SVZ線条体側でのBrdU陽性細胞数は、56±25、133±55、283±119と、bFGF+EGG の投与で有意に細胞数が増えていた。これらのBrdU陽性細胞の半数以上は幼弱神経細胞のマーカーであるDCXを発現し、神経前駆細胞であることが示された。現在生後35日(低酸素虚血侵襲後28日)の脳切片を用いて、成熟神経細胞への分化の程度を解析中である。 神経学的行動評価をHIE作成後7日、14日までfoot fault testにて解析したが、Sham controlとbFGF+EGF groupでの差は認められていない。今後も検索を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に実験モデルの作成はでき、脳組織切片の作成も終了した。 本年度は組織切片のBrdU、DCX、NeuN、GFAPによる単染色を行い、その後BrdUとDCXの2重染色を行ったが、生後2週間の新生児脳の染色性が弱く、良好な2重染色およびレーザー共焦点顕微鏡による良好な画像撮影ができるまで約6か月を要した。また、フリーザーの不具合から、HIE後28日の脳切片の保存状態が思わしくなく、一部作成し直しとなり、約3か月の時間を要した。現在BrdUとDCXの2重染色は解析終了、BrdUとNeuNの2重染色について解析中である。 神経学的行動評価については、記録は終了、解析中である。 以上の理由でやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、26年度に引き続きBrdUとNeuNの蛍光2重染色法による解析、および神経行動評価の解析を続行する。 実験計画を一部変更し、bFGF+EGFの神経再髄鞘化に関する検討を、グリオーシスに及ぼす影響の検討に先んじて行う。神経再髄鞘化は、オロゴデンドロサイト前駆細胞をNG2で、成熟オリゴデンドロサイトをAPCで染色し細胞数の変化を評価、また神経線維をNF200、髄鞘をMBPで2重染色し、髄鞘化率の違いについて評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
蛍光2重染色での最適な撮影条件を見出すための染色実験を繰り返したこと、および保存切片のトラブルのため、組織を一部作り直したが、その際に必要なbFGFおよびEGFは前年度購入保存分があり、ほとんど支出を必要としなかった。研究が予定通り進めば、GFAPやNG2、APCなどの抗体購入や、学会出張を行う予定であったが、研究計画の遅れにより次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
今回の研究成果を6月カナダで開催される国際脳循環代謝学会、および来年2月に開催される米国脳卒中学会で発表予定あり、参加費用および旅費にあてる。 また、組織化学法、蛍光抗体法に必要な物品、試薬、および追加実験のための実験動物購入費用、及び飼育費用に充てる予定である。
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