研究課題/領域番号 |
25461652
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
杉江 秀夫 自治医科大学, 医学部, 教授 (60119980)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 新生児仮死 / 脳グリコーゲン / 脳型ホスホリラーゼ / 脳エネルギー産生 / 脳性まひ / 嫌気性解糖 / アストロサイト |
研究概要 |
脳型ホスホリラーゼ遺伝子(PYGB)のgenotypeについて、新生児仮死症例のoutcomeとの関連性を統計学的に検討し、新生児仮死の予後推測のrisk factorとして、genotypeの情報が有意義であるかどうかを評価することを目的としている。当該年度では(1)症例の収集:当院で出生した満期産の新生児で、仮死(5分後Apgar scoreが7点以下)のあったもので、3年以上臨床経過を追跡しえた症例を対象に、最終的には20例~30例の症例収集を目標にしている。 (2)神経発達障害を残した群と、正常発達群の2群に分け脳型グリコーゲンホスホリラーゼ(PYGB)の遺伝子多型、変異の検索を行いつつある。本年度は現在までに厳密な対象選定の結果12例(男6例、女6例)の唾液収集が完了した。神経後遺症を残しているものは4例で重度の脳性まひであった。残りの8例は正常発達をしていた。これらの症例についてはDNAを抽出し、PYGBの全エクソンをPCRで増幅し、塩基配列を決定する。(3)収集した症例について、周生期の臨床検査データなどの情報の収集、現在の神経症状の評価および発達テストをもとに患者のデータベースを作成している。(4)症例リクルートをさらに増やす目的で、研究協力機関の追加として、東京女子医科大学小児科を新たな研究協力施設として、当院倫理委員会に申請を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は新生児仮死の神経後遺症の起序の究明である。厳密な基準による症例のリクルートが重要であるが、現在までに12例の症例がリクルートされた。 唾液の採取も施行し、採血に比較すると患児への侵襲も少なく順調に採取できている。 唾液からのDNA抽出も終了し、現在PCRでのPYGB遺伝子多型の分析に取り掛かるところである。また症例のデータベースについては襲世紀の検査所見、その後のフォローアップの状況などについてのデータベースを作成し、来年度に遺伝子分析の結果とあわせて多変量の解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
臨床症状、周生期情報、脳型ホスホリラーゼの遺伝子変異、多型などのデータ解析:①発達障害群と正常発達群の間でgenotype/phenotypeとの関連について分析、②病的遺伝子変異が認められた場合はその意義づけを検討すると共に、脳グリコーゲン代謝異常症の疾患概念の確立と病態・臨床症状を詳細に抽出し、新たな“脳型糖原病”としての疾患概念を提案、③ ビタミンB6は筋型ホスホリラーゼ欠損症(McArdle病)で治療が試みられ、効果を示している。本研究で脳型ホスホリラーゼの機能変化が認められた場合は、ビタミンB6投与による、新生児仮死の脳保護の一治療法としてその可能性を多施設共同で検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度では主に症例のリクルートを行った。合わせて承諾の得られた症例については、唾液抽出とDNA抽出を行い一部のPYGB遺伝子につき全エクソンの解析を試験的に行った。検索については順調に進み、次年度の本格的な遺伝子検索の基礎ができた。当該年度では症例数がやや少なかったため、分析に要する支出が少なかったため、研究資金については繰越が発生した。 今年度は本格的に遺伝子型の検討と、症例の臨床データをあわせた統計処理を予定している。 また研究協力機関を追加することで、さらに症例のリクルートが図られることが予想されるので、総合的に遺伝子解析の出費が増加することが予想される。最終的な症例数としては、後遺症群20例、正常発達群20例を予定しているため、繰り越した研究資金と本年度の研究資金を合わせて研究の遂行をする予定である。
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