研究課題
本研究では新生児仮死児の神経学的予後に、仮死の程度では説明ができない差があることに注目した。その要因として低酸素時の唯一の脳エネルギー供給を担っている嫌気性解糖に関わる脳型ホスホリラーゼ遺伝子(PYGB)多型に起因するホスホリラーゼ酵素の機能的差があり、それが予後の差に関連していないかどうかを検討してきた。本研究ではPYGB多型を用いた神経学的予後推定のバイオマーカーとしての確立とビタミンB6を臨床応用に展開するための基盤研究について検討した。その結果下記のような結果を得た。① PYGBの日本人遺伝子多型としてはエクソン8、10、12、14に多型を認めた。②予後良好群と不良群ではエクソン12 (rs2227891:A/G),14 (rs2227892:T/C)のPYGB多型に特徴的な差があった。本研究のWeak pointとしては、症例数が正常群8例、不良群12例であり、今後このPYGB多型が新生児仮死の予後バイオマーカーとして有用であるかどうかさらに症例の蓄積が必要である。周産期医療の進歩により我が国の周産期死亡率は国際的にも最も低い水準になっている。しかし仮死などによる神経学的後遺症の頻度は減少していない。本研究では嫌気性解糖に関わるグリコーゲン代謝に注目し、新生児仮死における脳代謝病態に関して基礎的研究を行った。脳におけるグリコーゲンの役割はいまだ不明な点も多く、その病態については最近注目と見直しがされつつある。新生児仮死の神経予後バイオマーカーとしてPYGB遺伝子多型の意義、また新生児仮死の脳代謝について今後の治療への可能性を含めた研究結果を得た。
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医学の歩み
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Mol Genet Metab Rep
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http://dx.doi.org/10.1016/j.ymgmr.2016.11.001