研究課題/領域番号 |
25461655
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
石本 人士 東海大学, 医学部, 教授 (10212937)
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研究分担者 |
東郷 敦子 東海大学, 医学部, 助教 (20408024)
西村 修 東海大学, 医学部, 助教 (80296657)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 妊娠維持機構 / midkine |
研究実績の概要 |
本研究の目的は胎児胎盤羊膜系の母児間のクロストークに関わる分子の機能と作用機構の解明である。母児間のクロストークに関わる分子候補であるmidkine(MK))について、胎児側のinterfaceである胎盤絨毛においてその局在は主として妊娠初期のsyncytiotrophoblasts(STB)に見られることが判明した。STBは隣接する細胞性cytotrophoblast(CTB)が細胞融合により多核化し分化することにより形成される。そこでMKがSTBに主に発現することから隣接するCTBに影響を与えているのではないかと考え、CTBのモデル細胞であるBeWo 細胞を用いて検討した。近年Syncytin-1、Syncytin-2がCTBの細胞融合には、key regulatorとされている。そこでまずMKがSyncytin-1やSyncytin-2の発現調節をしている可能性について検討した。BeWo細胞を培養しrhMKを添加すると、Real-time RT PCRによる解析で、MKは Syncytin-2のmRNA発現を用量依存性に増加させたが、Syncytin-1 mRNAは変化させなかった。現在、Western-blot法を用いて蛋白レベルでも同様の調節があるか検討している。またBeWo細胞においてはcAMP添加により細胞が融合し多核化することが知られ、STB形成のモデルとして多くの研究で利用されている。またこの過程で、cAMP添加はSyncytin-1とSyncytin-2の発現を増強させていることが知られ、cAMPの細胞融合作用の一部はSyncytin-1とSyncytin-2の発現増強を介しているものと考えられている。今回、cAMPアナログである8-Br-cAMPをBeWo細胞に添加してみると、MKもsyncytinsと同様にcAMPの発現制御下にあることが判明した。したがって、我々はMKの妊娠初期絨毛における役割の一つの可能性に、MKがSyncytin-2の発現増強を介してCTBがSTBへと細胞融合・多核化するプロセスを促進することがあるのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に示すように母児間のクロストークに関わる分子候補であるmidkineについて、局在から機能を推定し、現在まで順調に解析が進んできている。
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今後の研究の推進方策 |
胎盤に関連した実験については、今後、BeWo細胞におけるMK強制発現や細胞融合モデルを利用した実験などを通じて、MKのCTB/STBにおける役割について解明していきたいと考えている。またMKが母体ー胎児間のクロストークの主役の一人であるextravillous trophoblasts(EVT)にも発現していることから、EVTモデル細胞株を用いたMKの機能解明も行いつつある。羊膜や肺についても主にMKに関連した解析を進めており、preliminaryな結果を得ている。今後、研究の進展にしたがって計画の細かなmodificationを行い、当初の目的達成にむけて研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では研究に必要な新規や追加の試薬購入が安価で済んだこと、前年度からの繰越金があったこと、また次年度に実施予定の実験に必要な試薬購入などについて慎重に吟味する手順を踏んだことで、結果的に次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進展に合わせ様々なassayを予定しており、相応の調達資金が必要である。また成果発表に要する費用も発生する。今後とも効率的に無駄のない支出を行っていく。
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