研究課題
基盤研究(C)
最近、私共は動物個体を用いたエレクトロポレーション法により、生後マウスの脳室帯ーrostral migratory stream (RMS)ー嗅球における神経新生を解析する手法を確立した。知的障害の発症候補遺伝子として低分子量Gタンパク質情報伝達経路に関連する分子がいくつか同定されている。低分子量Gタンパク質の一つであるRac1は、主に線維芽細胞株を用いた解析から細胞移動や細胞接着を制御してることがよく知られているが、生後の神経新生におけるRac1の機能はあまりよくわかっていない。そこで今年度は、生後マウス嗅球で見られる神経新生におけるRac1の機能解析を行った。生後0日~2日のマウス脳室内に遺伝子溶液を注入後、エレクトロポレーションを行い、6-7日後に組織切片を作製し形態学的に解析した。その結果、Rac1をノックダウンした群では、コントロール群に比べて嗅球へ移動した新生神経細胞が減少していた。逆にRac1を外来性に発現させたところ、コントロール群に比べて嗅球へ移動した新生神経細胞は増加していた。これらのことから、生後マウス脳で見られる脳室帯ーRMSー嗅球における神経新生をRac1が制御していると考えられた。このRac1による神経新生の制御が、脳室帯における新生神経細胞の増殖や分化を調節しているために見られるのか、あるいは細胞移動そのものを調節しているのかを明らかにしていく必要があると考えている。
3: やや遅れている
エレクトロポレーション、組織切片の作製、顕微鏡観察、画像解析といった一連の実験過程を遂行しなければならないため予想以上に時間がかかっている。また、動物個体を用いた実験であり、個体間のばらつきも大きいため、信頼性の高いデータを得るためには数多くの例数を重ねる必要がある。これらのことから、現状としては、当初の予定よりやや遅れていると考えている。
実験を重ねるうちに、一連の実験操作を行う時間を短縮できる傾向にあり、今後は迅速に実験データの解析を行えるため、研究の遅れを取り戻せると考えている。また、これまでの研究過程で新たに生後マウス脳で海馬歯状回顆粒細胞に外来遺伝子を導入する手法を見いだしたため、知的障害関連分子の海馬神経細胞の発達における機能解析にも取り組みたい。
組織切片の作製、顕微鏡観察、画像解析といった一連の解析を行っているが、それぞれのステップで当初の予定よりも時間がかかっている。そのため、研究試薬等を購入する経費が少なくなっているため。一連の解析を迅速に行える体制が整いつつあるため、主に、購入が増加することが予想される研究用試薬、プラスチック器具類、実験用動物などの物品購入費として使用する予定である。
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