研究課題/領域番号 |
25461658
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研究機関 | 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 |
研究代表者 |
森下 理香 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 神経制御学部, 研究助手 (30393135)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海馬 / エレクトロポレーション / 神経発達 |
研究実績の概要 |
海馬は記憶・学習過程において重要であることが知られている。統合失調症などの精神疾患や自閉症などの知的障害の患者では、海馬の発達に異常が見られる例が存在する。私共は、昨年度までに新生仔マウスを用いた電気穿孔法(エレクトロポレーション法)による海馬歯状回神経幹(前駆)細胞への遺伝子導入法を確立した。胎生期から生後発達期における歯状回神経幹(前駆)細胞の発達に関わる分子機構に関しては、不明な点が多い。今年度は、精神疾患や知的障害の発症との関連が指摘されている分子(神経発達疾患関連分子)を、新規遺伝子導入法を用いて発現抑制することにより、海馬歯状回神経幹(前駆)細胞の移動に影響が見られるか検討した。生後0~1日の新生仔マウスの脳室内にGFP発現ベクターと神経発達疾患関連分子の発現抑制(ノックダウン)ベクターを注入し、エレクトロポレーション法により遺伝子導入した。21日後に脳組織切片を作製し、歯状回におけるGFP陽性細胞の分布を形態学的に解析した。これまでに、数種類の神経発達疾患関連分子のノックダウン実験を行い、様々な表現型が観察されている。例を挙げると、統合失調症発症との関連が知られている低分子量Gタンパク質の活性化因子であるKalirinは、ノックダウンしても神経細胞の移動障害は観察されなかった。一方、自閉症および統合失調症との関連が指摘されているCYFIP1(cytosolic FMRP interacting protein)をノックダウンした場合には、歯状回に局在する細胞の数が減少する傾向にあった。これらの結果から、私共が確立した新規遺伝子導入法は、海馬歯状回神経細胞の発達過程における神経発達疾患関連分子の機能解析に有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物個体を用いた新規遺伝子導入法の開発に予想以上に時間がかかった。しかしながら、最近になって、実際に機能分子の探索を行う段階に入ることができた。数種類の分子について機能スクリーニングを進めており、いくつかは興味深い表現型が観察できている。今後の研究の進展が期待できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験で、ノックダウンすることにより海馬歯状回神経幹(前駆)細胞の移動障害が見られている分子について詳細な解析を進める。具体的には、細胞増殖、細胞分化、細胞死、細胞運動などの、どの段階に異常があるのか、固定組織標本を用いた解析および培養脳スライスを用いた共焦点レーザー顕微鏡タイムラプスイメージングにより明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までの新規遺伝子導入法の開発に、予想以上の時間がかかった。また、再現性を確かめる実験が多かったため、ある程度限られた物品を使用することになった。これらのことから、試薬などの物品費の使用額が予定よりも少なかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最近、多種類の神経発達疾患関連分子について機能スクリーニングを開始した。今後は、実験用動物、市販抗体、プラスチック器具類などの物品購入がこれまでより増加すると見込んでいる。経費削減も念頭において、研究費の適正使用に努めて行きたいと考えている。
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