研究課題
本研究では、新生児低酸素性虚血性脳症などの周生期脳障害に対する新規治療法として、新生児において最も安全かつ簡便に採取できる幹細胞源である臍帯血幹細胞の効率的な増殖法や再生医療法を開発し、その分子基盤を明らかにすることを目的とする。これまでに、ヒト臍帯血由来単核球や間葉系幹細胞を採取し動物モデルに用いた報告はいくつかあるが、その効果は実験条件により様々である。本研究では、ラット臍帯血幹細胞を増殖させ、ラット新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)モデルに移植する、という同種移植の系で治療効果を検討している。GFPトランスジェニックラット胎仔臍帯血より有核細胞層を分離し、4種類の増殖因子存在下で幹細胞を培養増殖させた(UCBDC)。この増殖させた細胞(UCBDC)をHIEモデルラットに受傷3日後に腹腔内投与したところ、梗塞面積の減少および運動機能の改善が観察されたが、個体によるばらつきが大きかった。UCBDC投与したHIEラット脳のパラフィン切片を作製し、ミクログリアマーカーであるIba1, アストロサイトマーカーであるGFAP免疫染色を行った。シャム手術群と比較しHIEラットでは、Iba1陽性細胞、GFAP陽性細胞の梗塞層周囲への著名な浸潤が観察されたが、UCBDC投与群と対照群とで明らかな差は観察されなかった。また、細胞増殖マーカーであるKi67免疫染色を行ったところ、海馬におけるKi67陽性細胞数は、UCBDC投与群と対照群とで明らかな差はみられなかった。以上のことから、HIEラットに対するUCBDC投与が、ミクログリアや反応性アストロサイトの遊走や内在性の神経新生に影響を与えている可能性は低いと考えられた。
3: やや遅れている
持続的低酸素刺激のみによる新規脳室周囲白質軟化症(PVL)モデルマウス作製を試みたが、この系では、低酸素環境から正常酸素濃度に戻す際に母獣が幼獣を食殺してしまい、安定した実験系とならないことがわかった。
新規PVLモデルマウス作製をあきらめ、今後は、幹細胞の効率的な増殖法や、脳内への侵入を促進する方法等について検討していく予定である。
当初予定していた備品が実験に不適切であることがわかったため、購入を取りやめた。
備品購入の代わりに、次年度はアルバイトを雇用し、遅れている実験の進捗を図る予定である。
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Dev. Neurosci.
巻: Feb. 17 ページ: Epub