研究課題
本研究では、新生児において最も安全かつ簡便に採取できる幹細胞源である臍帯血幹細胞を用いて、周生期脳障害に対する効率的な再生医療法を開発することを目的とする。本研究では、ラット臍帯血幹細胞を増殖させ、ラット新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)モデルに移植する、という同種移植系を用いて治療効果を検討している。GFPトランスジェニックラット胎仔臍帯血より幹細胞を培養増殖(Stem cell enriched umbilical cord blood cells; SCE-UCBC)させ、HIEモデルラットに受傷3日後に腹腔内投与した。これまでに、受傷3週間後の評価で梗塞面積の減少および運動機能の改善が観察されていたが、今年度は、新たにパラフィン連続切片を作製し、立体解析学的評価を行った。 500μm毎にパラフィン切片をHE染色し、Cavalieriの原理に基づいて脳の残存容量を計測したところ、健常側に対する障害側の残存脳容量は、対照群では40.1±2.8%であったのに対し、SCE-UCBC投与群では61.2±6.9%と有意に増加していた。また、活性化ミクログリアマーカーであるED1免疫組織染色を行ったところ、活性化ミクログリアの障害部位への集族は対照群では249±19万個/個体であったのに対し, SCE-UCBC投与群では116±55万個/個体と有意に減少していた。一方、血管内皮細胞糖鎖を特異的に認識するTomato lectin染色を行い、運動野における総血管長を比較したところ、対照群障害側およびSCE-UCBC投与群障害側との間に有意な差は認められなかった。以上のことから、臍帯血幹細胞投与は宿主に対し何らかの反応をひきおこし、活性化ミクログリアの障害部位への集積を抑制して、梗塞軽減効果をもたらしている可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件)
Sci Rep
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Nat Commun
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